決戦前の告白(ハル&ウェイアン)

「1!2!」僕は四日後の決戦に備えて持ち武器であるマルタの剣を持って街の訓練場で素振りをしていた。

「頑張ってるじゃないか。」後ろから声がする。

そこにいたのはプリテンダーのウェイアンさんだった。

「おいおい!そんな睨みつけないでくれ……?ハルくんと少し話がしたいだけだ。」

「話って、なんですか……?」僕は少し冷たい口調でそう言った。

「君の前世についてさ。」

「!?」なんで分かるんだ……?誰にもそんなことは話してないのに……

「やっぱり……。驚くよね。でも君と僕に似ているところがあるんだ。」

「似ている……ところ……?」

「ステータスさ。」

「やっぱりか……」

「君も感づいていたか……そう。転生者のステータスは低いレベルでもすでにSランク冒険者に匹敵することが多い。」

「でも、やっぱりデメリットが……?」

「そう。君も出てきたか……。そのとおりでデメリットが存在する。僕の場合は魔力がとても低い。だからこのキューブで補ってるんだ。こいつは魔力消費無しで……まてよ。言わないほうがいいね。決闘のときの楽しみが消えてしまう。」

「僕は戦闘に楽しみは考えませんけどね……」

「まぁ、ハルくんはそうだろうね。それでいいと思う。少し僕は狂いすぎたみたいだ……昔は戦闘はあれほど嫌いだったのに。」

「ウェイアンさんにもそんな時期が……」

「あぁ……あったとも……あれは3年前の事だった……。」

――――――――――――――――――――

「僕は君と同じように転生者だったんだ。そして、君と会った草原に目覚めたらいたんだ。」

「ウェイアンさんもですか……」

「ただ、転生ボーナスで貰ったキューブが一つ。手元にあっただけだった。」

「僕みたいだ…」

「それでそのキューブをどうにか使ってイノシシを倒して武器を手に入れようとしたんだ。でも、それは難しかった。まぁ、キューブの角でイノシシに一時的に衝撃を与えて、気絶させてたんだけどね。」

「すごい斬新なやり方を……!」

「確かにそうかもね。でも、生きるためには仕方がなったんだ。」

「そしてその後に今の月の狼のメンバーとたまたま会ってね。」

「その後で初めてキューブの真の力を知ったんだ。」

「なるほど……」

「だから、最初から能力を駆使できている君はとてもすごいと僕は思っているよ。」

「ありがとうございます……」

なんでだろう。僕を追放したグループのメンバーのはずなのに……この人からは優しさを感じる。

「もしかして……ウェイアンさん、自分の強さを見抜いてました……?」

「さぁ……?どうだろうね?」

「いちばん大事なところを濁すんですね……」

「だって変な責任は負いたくないしね。それに、僕は純粋に能力のある人を尊敬してるだけだ。僕はキューブがなかったらここの世界で生活のできない弱い人だからね。」

「そんなことないですよ……!あの馬車のときウェイアンさんが時間を稼いでくれてなかったら……」

「あれはたしかにそうかもしれないね。でも、あれはハルくんの的確な指示があったからこそできたことだ。」

「ありがとうございます。でも、僕はあのとき剣を作ることしかしなかった。それしかできないから。今となってはそれが悔しくて……そのせいでパーティーも追放されたのかなって。」

僕は剣を地面にそっと置く。馬車のときと同じ剣。その剣は訓練場に差し込む光を反射し、暗いスタンドを少しだけ明るくしていた。

「なら、今度の決闘で見せつけてやればいい。」

「え?」

「君が強いってことを見せつけてやれはいいのさ。」

「それは……当たり前では……?」

「当たり前だからこそだよ。当たり前のことから変えていくのが一番いいと思うよ。」

「確かに……」

「だから、本気で戦ってほしい。もちろん僕も君に負けたくない。悔いのないようにお互いやろうよ。」

「そうですね……!」

「練習を邪魔して長話をしてしまってごめんね。」

そう言ってウェイアンさんは去っていった。

本気で戦ってほしい。その言葉を頭に思い浮かべながらできる限りのことをその後の4日間やり続けた。

剣術の上手いホムラ剣士というモンスターと戦いまくったり、隠れて剣の動かし方を研究したり。

とある技の練習をしたり。

そして、決闘の日を迎えた。

コロシアムに行く前にライマルクさんの店に寄っていこう。

「ライマルクさん。行ってきます。」

「あぁ!行って来い!ガラクタは沢山ボックスに用意してある!存分に使えよ!そして、ルズベリーで1番の冒険者になってこい……!」

「わかりました!行ってきます!」

そして、僕はコロシアムへと向かう。

ついにあのパーティーの人たちに追い出されたときの言葉を思い知らせることができる。

「武器の相性の大切さ……ここで思い知らせてやる!」

僕は深呼吸をしてコロシアムの選手専用入り口へと入っていった。

コロシアムの中からは歓声が溢れている。

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