素材屋 ライマルク

カランカラン。と扉を開けるとベルが鳴る。

「いらっしゃい!若い男の子がここに来るなんて珍しいな。なんの用だい?」

「えっと……素材屋のライマルクさんのお店ってこちらですか?」

「いかにも!私が店長のライマルクだ。」

「えっと……鉄の破片と、金の破片、鉛の破片がそれぞれ20個ずつほしいんですけど……」

「破片……?破片を頼む客は初めてだな……!面白い!気に入ったぞ!名前は何というのかね?」

「ハルです。」

「ハルくんか!覚えたぞ!破片なら俺の店だと廃棄物だから無料であげれるぞ!」

「本当ですか!?」

「あぁ!いいとも!なんなら中の廃棄物置き場見に来るか?その中のもので欲しいものは無料であげるぞ!」

そんなこんなで僕はライマルクさんの店の中の廃棄物入れに来ている。

「すごい……これってなんですか……?」

僕が手に取ったのは機械のように点滅しているスライムの粘液のようなものだ。

「あぁ!それか!それはマシンスライムっていうやつからドロップするアイテムだ。俺の店では別のドロップアイテムしか使わないからな……」

「これ、もらいます!いいアイテムが作れそうな気がします!」

「おぉ!いいぞ。逆にゴミを引き取ってくれるならありがたい。いや、お前にとってはお宝なのかもな。」

「そうですね。僕はノーマルドロップアイテムが手に入らないので……」

「ほう?それはどういうことだね?」

「実は……」そう言って僕はスキルの説明をライマルクさんにした。

「なるほどな!それは面白いスキルだ!ということは……なるほどな。文字違いの生成の人ならここの常連でいたが、まさか別能力の別文字の奴がいたとはなぁ……!」

「それってまさか……」そういったとき、

「ライマルク!受け取りに来たぞ!」

聞き覚えのある声がする。ガスパオロだ。

「ハルくん。ちょっと待っててくれ。商品を渡してくるよ。」と、ライマルクさんは僕に何かあったと察してくれたのか小声で僕に話しかけ、カウンターへ向かった。

「例の生成補助のやつはできたか?」 

「えぇ!もちろん!これがあれば同じレア度のアイテム同士を組み合わせて強化することが可能です!」

「素晴らしい……これで5日後の決闘で相手より上手に回れるだろう……」

「決闘ということはキンググリーンスライムを倒したやつがいるということですね。」

「あぁ。噂によると我々のパーティーから追放されたハル……とかいうやつだとか……」

おいおいまてまてまて……今言われたら……

「そ、そうか。とりあえず注文物を取ってくるよ。」

ライマルクさんが入ってきて小声で僕にこう言う。

「君がいることは隠しておくから安心してくれ。」

「ありがとうございます。」

お礼を言うとライマルクさんはにっこり笑ってから奥に玉のような物を持っていった。

「こちらが注文の品です。」

「ほぉ……キレイな色をしているではないか。気に入ったぞ。」

「光栄です。」

「では今日はこの辺で失礼する。また何かあったら来るからな。」

そう言ってガスパオロさんは店を出ていった。

「よかった……」そうつぶやくとライマルクさんが「待て、ハルくん。そこの床の下に隠し部屋がある!急いで入るんだ!」と耳打ちしてきた。

何がなんだか分からないが、僕は急いでそこに入った。

その直後に裏口がバァン!と開く音がした。

「ライマルクの親父さんよぉ。さっき俺が物を取りに来たときにハルがここにいただろ……?」

ガスパオロだ。僕がいるのをわかっていたのか……

「はて、なんのことですか?私しかここにはいませんでしたよ?」 

「とぼけるな。わかっているぞ。お前が普段と違う動きをしてハルという名前を誰かに呟いていたこともな。」

「っ……」

「まぁ、いい。どうせお前は聞いても吐かないだろうしな。あいつはどうせコロシアムの試合で俺たちに負ける。その時にあいつは無名となり落ちぶれるだけだ……」

「は、はぁ……」

「ハルに何も渡すんじゃないぞ?あいつに加担したら許さないからな。」

そう言ってガスパオロは出ていった。

ライマルクさんは外にガスパオロがいないのを確認してから「ハルくん。もう出て大丈夫だ。」と言ってくれた。

「ふぅ……ガスパオロ、なんであんなにイライラしてんだろ……」

「嫉妬ってやつだろうね。ハルくんの実力を彼は理解することができずに追い出した。しかしその後に君は冒険者達が苦労して倒すキンググリーンスライムを難なく倒した。自分達は苦労して倒したのに……ってことだろうね。」

「はい……ってなんで難なく倒したってことを……?」

「たまたま素材を集めているときに通りかかってね。あれはすごい。その時は顔は見えず分からなかったが是非とも縁があれば力になってあげたいと思ってたんだ。まさか本人からここにきてくれるとは……」

「見られてましたか……だからスキルの話をしたときになるほどって言ってたんですね。」

「そうだ。君のスキルは面白いな。そうだ。この際だ。私の廃棄物ボックスにアクセスできる機械をあげよう!」

「え、でも……ガスパオロに怒られませんか……?」

「本当に協力したい人に協力しなくてどうするんだい?」

「あ……じゃあ!ありがたく頂きます……!」

「おぉ!そうしてくれ!必ず勝ってみせろ!そして胸を張ってこっちに帰ってくるんだ!」

「わかりました!今日はありがとうございました!」

こうして僕の街での一日は終わった。

決闘まであと四日だ。

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