第163話 ダルタスの罪悪感

 ダルタスは苛立っていた。


 それは自分に対してである。


 クンテは自分を狙っていたのだ。

 あくまでもルミアーナは自分をかばってあんな痣を…。


 あの美しい顔に…俺なら構わなかったのに…。

 あの痣が自分のせいだと思うといてもたってもいられず見てはいられない。


 自分の命より大事なルミアーナにあんな痣を…、

 ルミアーナは大丈夫だと言うが、そんな訳があるはずもない…。


 あんなにも美しい天使か女神か妖精のような顔に…。

 あの珠のような肌にあんな…。


 ルミアーナは本当に後悔していないのだろうか?

 こんな俺と結ばれて…。

 俺のせいだとは思わないのか?


 いいや、ルミアーナはそんなことは思わないだろう。

 これは自分が思っている事だ。


  だと。


 わが身は子供のころからこの頬の傷のせいでどれ程、いたたまれぬ思いをしてきたことだろう。

 そんな思いをこれからルミアーナにさせてしまうのか?


 いいや、ルミアーナは女だ。

 きっとこれまでの自分よりも辛いだろう。


 そんな目にあわせたのが、自分の昔の旧友…騎士学科で共に学んだ旧友である。

 責任を感じずにはいられない。


 どうしたらいいのかすらわからず、今朝も目をあわせられずにいた。


 すまない!すまない!すまない!


 愛しくて愛しくて片時も離れていたくないほどなのにルミアーナを守りきれなかったことでその罪悪感が自分を苛む。


  愛している!


  愛している!


  愛している!


 こんな自分をまだ本当に愛してもらえるのか?

 いいや、ルミアーナはきっと愛してくれるだろう。


 でも俺でよかったのか?そんな資格がこの俺にあるというのか?


  本当はもっと相応しい相手がいたのではないか…。


 クンテも、もしもルミアーナの相手が王太子アクルスやルーク王子だったのなら納得していただろう。

 この俺だからこそ納得がいかなかったのだ…。


 ああ、やはり自分のせいなのだと思う。

 けれど、どんなにそう思っても自分は彼女を手放してやる事は出来ない。

 許されるべきではない。だがどんなに自分勝手と思われ様が手放す事などできぬ。死ぬ方がはるかにましだと思えるから…。

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