第26話 第二王子ルーク

 いよいよ騎士団見習いに入る前日、王の私室に呼ばれ王妃にともなわれてルミアーナが部屋に入ると、そこには自分と年の近そうな綺麗な男の子が立っていた。


 おお~綺麗な男子だなぁ~とルミアーナは思った。

 髪色は黒に近いブラウンで瞳もブラウンなのだが、光の加減で時折、金色にもみえる。

 すらりと伸びた手足に優し気な顔立ちである。


「ルミアーナよ、其方に我が国の第二王子を紹介しよう。ルークじゃ」


「まぁ、お初にお目にかかります。ルーク王子殿下、アークフィル公爵が娘ルミアーナにございます」と礼をとる。


「はじめましてルミアーナ嬢、兄上の事聞きました。弟の僕からもお詫びします」と頭を下げられた。


「まぁ、もったいのうございます。それに兄上様の事はルーク王子様には関係ございませんもの、どうか頭など下げないでくださいませ」と懇願する。


「ありがとう。優しいんだね」と、にっこりと穏やかなほほ笑みをたたえるルークはアクルスとは全然違ってとても好印象だった。


 ルミアーナもつられてにこっとほほ笑む。


 穏やかな二人の様子に、これはひょっとしていけるかも?と王と王妃はご機嫌である。


 とりあえず、国王夫妻はルーク王子も市井を学ぶという名目で騎士団に入れる事にしたとリゼラとルミアーナに告げた。

 ひいては、ルミアーナと共にルークも一緒に修行させるようにとリゼラに命じた。


 リゼラは薄々、国王夫妻の思惑なるものを感じたが、ルミアーナ自身が望まない限りルーク王子とも無理にくっつけようとは思わなかった。


 なので、あくまでも建前の「市井を学ぶ」という名目を優先して同行だけに徹することにした。


 幸い、兄の王太子とは違い真面目で温厚なルーク王子だったので、ルミアーナもリゼラもさほど危機感は覚えず受け入れた。


 ***


 ルミアーナは思った。

 なんというか、ルーク王子は実に穏やかな性格で優しいな…と。

 男女の意識はなく自然に気負わずに語り合える感じなのだ。


 ルーク王子は王族である事をひけらかすでもなくルミアーナの話に真面目に耳を傾けてくれる。

 ルミアーナが、ミウ・クーリアナと名乗り、男子として騎士見習いになり修行するなどという突拍子もない考えも否定しなかった。


 男装までして武術を習うことも自分で自分を守れるようにとは、すばらしい考えだと賛同してくれ、騎士見習いの格好の時にはミウと呼ぶことに同意してくれ、ルミアーナ…ミウの良き理解者となった。


 ルークは先日、王立ラフィリル学園の魔法学科を卒業したばかりとの事だったが、なかなか優秀だったようだ。ルミアーナの事情を聞くと、それではミウになる時はルミアーナとばれないように…と魔法で簡単に瞳と髪の毛の色を自分のような濃い茶色に、そして肌の色も多少濃くしてくれた。


 これにはミウもびっくりである。


 騎士の中でも魔法を使える者はごく少数で、せいぜいまじないがつかえる程度の者がほとんどの筈である。

…と、言うのも優秀な魔法使いは、大抵神殿に召され神官となるからである。


 ルークが王子でなければ、否応なしに神官への道にまっしぐらだったろうが、そこは王位継承権第二位の王子故にそうはならなかったのである。


 またリゼラの属する騎士団ウルバ隊には王命が下り、ルーク王子を騎士見習いとして修行させよと指示があり共に鍛練を行う事になった。


 修行中は王族扱いは一切無用、王子ではなくルークを他の見習い(ミウ)と同様の扱いとする事とつけ加えられた。


 国王夫婦の企み(ルーク王子とルミアーナくっつけ大作戦)は、、順調に進んでいるかのように思われたのだった。

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