第25話 ルミアーナの訓練の行方

 さて、ルミアーナの基礎体力が、意外にもかなり高かったことが分かり、早速、国王夫妻に報告した上で近衛兵専用の訓練場での練習の許可を願い出たが、これには難色を示された。


 国王夫妻の心配も尤もな事であったので諦めるしかないか…とさえ思われた。


 と、言うのも、いくら身元のしっかりした貴族出身の身元の確かな者ばかりで編成された近衛兵だろうとほとんどがである。


 ルミアーナに邪な気持ちを抱く者がでてくるやもしれぬ!と、国王夫妻は危惧したのである。

(リゼラには誰が…とは言えないが、つい先日身元のしっかりした馬鹿者が出現したばかりなのだから)


「狼の群れに子羊を放つようなものではないか?そんな危険な事はさせられぬ」と王が言い、王妃も続けて気がかりを口にした。

「そうよルミアーナ!周りは男ばかりなのよ?貴女を巡って争いが起きるかもしれないわ!何より貴女自身が危ないわ!貴女を見初め思いつめた騎士に攫われたりしたらどうするの?」


 そんな国王夫妻のルミアーナを心配する言葉は、リゼラも納得せざるを得ないものだった。

 何しろルミアーナ様ときたら同性の自分ですら自分の家へ連れ帰りたいくらいの可愛らしさなのだから。



 国王夫妻に、そんな心配な理由を諭されているルミアーナを見て改めてリゼラは思った。


 危ないかもしれない!

 …とゆーか、危ないわっっ!


 よく考えたら国王夫妻も何だかんだと理由をつけてルミアーナ様を王宮にとどめているのは単に毎日自分たちが会いたいからではなかろうか?


 いや、多分そうだ!そうに違いない!


 王妃様なんてご自分のお部屋の続きの部屋をルミアーナ様に、あてがって!

 ほとんど、一日中、好きな時に会えるではないの?

 ズルいわっ!と心の中で思ったリゼラだった。


 残念だけれども仕方がない。


 ルミアーナ様の安全が第一と、リゼラは近衛兵訓練場での練習を諦めてもらうようルミアーナに伝えた。

(それを伝えるだけなのに国王夫妻までもが、ついてくる。よほど毎日ルミアーナ様の顔を見たいらしい)


「まあ、残念ですわ。リゼラや近衛兵の皆様と一緒に切磋琢磨しながら練習出来ると思っておりましたのに…」と、本当にがっかりした様子のルミアーナである。


「では、私、もう屋敷に戻りますわ。顔のかすり傷もすっかり癒えましたし、先程、顔をだしてくれた父に相談しましたら自分が教えるとはりきってらっしゃいましたし…」とルミアーナが言うと王妃が叫んだ。


「まーあぁぁ!何てこと!それはなりません!ルミアーナ!」


 『び!びっくりした!』という表情のルミアーナに王と王妃がまくしたてる。


「そうじゃ、其方はまだ危険なのじゃ。其方の命を狙った者がまだ、わからずじまいである以上、いつ何時また命を狙われるやもしれぬのだぞ?」王はいかにも心配した様子で言い立てた。


「え?私は王太子様の妃候補から外れたから、もう大丈夫なのではありませんか?」と心底驚いたようにルミアーナが言うと王が更に諭すように答える。


「ルミアーナ、其方かダルタス将軍との婚約を破棄した以上安心はできまい。そもそも、実際のところは、本当に王太子妃候補だったから狙われたのか、その他の思惑があってかなどわからぬのだから」


「…では、やはり、私は自分を守れるようになるためにも帰って修行します。何なら父と共に山にこもってでも!」と、拳をもちあげて言うと王も王妃もリゼラも慌てる!


「いやいやいや、絶対ダメですってば!それだったら、まだ近衛騎士団で鍛えた方がまだ安心ですってば!」

 リゼラが国王夫妻にくるっとむきなおる。


「むぅ!しかし」

「そうね、ルミアーナに悪い虫がついては大変だし!かと言って山籠もりだなんて…」と王妃も心配そうである。


「そうだわ!ルミアーナ様には訓練中、男装して頂いて私の弟ということにして見習い訓練に参加するっていうのはどうでしょう?いくら可愛くても男の子を襲うような趣味の者は私の知る限りうちの隊にはおりませんわ」と、リゼラの口から突拍子もない案が出た!


「まあ!楽しそう!是非やりたいわ!それなら私が女だからといって手加減とかもされなくてすみそうですし!」ルミアーナがその案に飛びついた!


 国王夫妻は、それはそれで心配だと思いつつも帰って…と渋々許可を出した。

 

 ただし、


 それは第二王子も騎士見習いという事にしてボディガードとして付けるから一緒に行動するようにというものだった。

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