第17話 両親の思い
二人が思いの外、早く戻ってきた事に公爵夫妻は拍子抜けしたようだったが、そんな事は無視してダルタスは自分が暴走する前にとそそくさと帰っていった。
それもまたダルタスが誠実であった故である。
***
貴族の見合いなど、お互いよほどの不都合がない限り、見合いイコール婚約である。
しかしながら結婚の時期などはラフィリルのしきたりで言うと男側からの申し入れが通例である。
つまり、男側が気に入らなければずるずると婚約期間をのばされて、その間にほかに愛人を作られたり、また他の貴族令嬢からの横恋慕であっさりかっさわれたりすることも決してないとは言えなかった。
ちなみにラフィリルでは基本的に女性側から断る事は難しい。
男性側に主導権があり男性側からの破談はよくある事だった。
王太子妃の単なる『候補』ですら、こちらから辞退など出来なかった。
王太子からの提案でなければ逃れる事は難しかっただろう。
両親は、心配したが、ルミアーナのほわほわるんるんした顔を見て、まあ喧嘩した訳でもなさそうだし…と胸をなでおろした。
とにかく今後も二人が出来るだけ親密になれるよう機会を作っていこうと団結している。
そんな親達の思惑を知ってか知らずでか、ルミアーナが嬉々として父にねだる。
「お父様、明日はダルタス様が訓練のご様子を見学してもよいとご許可くださいましたの!私を城内の訓練場にお連れ下さいな!」
「まあ、ルミアーナそんなものを見たいの?」とルミネが言うとルミアーナは心底、楽しみだというように笑顔で答える。
「ええ、お母様、私、今、体を丈夫にするために色々と運動を試しておりますでしょ!?護身術なども覚えたいと思っておりますし、何と言っても旦那様になる方の職場や普段のご様子、とても興味がありますもの」
「それは良いな。ついでに周りにルミアーナがダルタス将軍の婚約者だと知らしめてやるがいい!」と父カインも満面の笑みを浮かべる。
「そうね!相思相愛っぷりが評判になれば、思慮深い王様やお妃様ですもの!王太子様が万一無理を言っても王太子妃の話を蒸し返したりはなさらないでしょうしね?」
「は?王太子妃?」それはもう終わった話ではなかったのか?と怪訝そうな顔をするルミアーナに母が言葉を付け足す。
「ああ、ルミアーナは気にしなくてよいのよ。ルミアーナは、ダルタス様が良いのですものね?うふふっ」
「うふふ、はい。お母様お父様、私、ダルタス様以外の方は絶対嫌ですわ。ダルタス様と一緒になれないのでしたら修道院に入って修道女になりますわ!」と、決意表明した。
「なんと!あっぱれな心意気!それでこそ武人の妻となるに相応しい心構えぞ!」と父はルミアーナの一途で純粋な想いに感嘆し興奮ぎみに喜んだ。
我が娘はなんと健気で可愛らしいことかと!
「誰が可愛い娘を修道女になど!大丈夫よ、お前ほどの娘、たとえ鬼将軍と呼ばれるダルタス様でも愛さずになどいられる筈がないですもの!」と母も何か、気合いばっちりである。
可愛い娘の初恋である!しかもこの恋が成就すれば今後、命を狙われる心配も激減すると思われる!
確かにダルタスの見た目はアレだが、この国の英雄であり最強の守り手である!
そして何より娘本人が心から慕っているのである!
なんとしても叶えてやりたい!
「そうと決まれば、ルミアーナ、明日の装いを、完璧に仕上げなければ!モリー、フォーリー!私の宝石箱も、持ってきてちょうだい!とにかくドレスも宝石も一番似合うものを選びましょう。」
「お任せ下さいませ!」と、母付きの侍女モリーと私の侍女フォーリーはそろって気合いの入った返事をした。
アークフィル公爵家は、主従共に一致団結し明日のダルタス将軍の職場見学で『ダルタス将軍を本気にさせちゃう作戦』を決行するのだった!
まあ、そんな事をするまでもなく既に
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