第2話 ラフィリルの眠り姫

 表向きは平和で富める王国ラフィリル。


 中でも王宮のある都ラフィールは、街全体が美しく華やかだ。


 煉瓦造りの町並みに綺麗に舗装された石畳の道筋。


 様々な国から商人が集い諸外国からの交易もひっきりなしの賑わいである。


 そんな街中で、今、話題となっているのが「ラフィリルの眠り姫」である。


 王家の信頼も厚いカイン・アークフィル公爵の一人娘ルミアーナ。

 柔らかな金色の髪、どんな宝石も霞むような美しい双碧の瞳。


 一年も前の事、その美しさと賢さを妬まれて魔女に呪いをかけられたという噂の姫君の話である。


 実際のところは魔女の呪いとかではなく、暗殺未遂事件では?というのが濃厚な線ではあるが、この国で究明は難しく捜査は迷走している。


 事件は未解決のままで犯人もわからずじまいである。


 捜査を行っている軍部の見解も、未だ曖昧で貴族間の陰謀に巻きこまれ命を狙われ、毒を仕掛けられたのではなかろうか?という事らしい…。


 一見平和なこの国だが富める国ならではの利権や家督、政権争いなどの陰謀が、邪気に捕らわれうごめいているようである。


 とはいえ、貴族間のお家騒動などとめったな事を口にすれば首が飛んでしまうかもしれず揶揄した表現でその話はまことしやかに静かにささやかれていた。


 その噂の真意はわからない。

 どこまでが真実でどこからが作り事なのか…。


 噂は最初、民達の間で密かに囁かれていた。

 しかし、外国との交易も盛んだった事もあり、それは多国にまで広がり自国のみならず各国よりまじない師や術師、魔法使いや神官、巫女などが、我こそはと噂の姫を目覚めさせようとこの国に訪れたが、眠ったままで食事すらとれぬ姫君の命を繋ぐのが精一杯という話だった。


 まず国から認められた神殿の高い法力を持つ七人の神官や巫女らの祈りによって姫へ毒を打ち消す浄化の魔力を注ぎ続け延命している状態であるらしい。


 この一年というもの複数からなる神官と巫女達の夜昼途切れぬ祈りで命を繋いできたものの、もともと不安定な魔力に頼っての延命…限界がある。


 もう姫の命ももたない。

 よく一年近くも持ったものだ。

 二度と目覚める事はないであろうと真しやかに囁かれていた。

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