目覚めれば異世界!ところ変われば~姫?騎士?女神?~
秋吉美寿
第1話 目覚めると夢のような世界に
朝、目覚めるとそこは、中世ヨーロッパを思わせる世界だった。
あれ?
まだ夢の中?
今、めっちゃ目が覚めたと思ってたんだけどな?
ベッドの四隅には手の平大はありそうな、淡く乳白色に光る宝石のようなものが嵌め込まれている。
わぁ~すごい
あれよ!
まるで
うへへ
なんか素敵な夢~。
そか、昨日は高校柔道の国体で準決勝までいったのに気持ち悪くて負けちゃったんだっけ。
帰り道、歩道橋の階段からスッ転んで…んん~っ?
そっから…わかんないや…。
気を失っちゃったのかな?
ありゃ?どうやって帰ってきたんだろ?
ひょっとして担架とかで運ばれたのかな?
んーまあ、いいか。
と、おぼろげながらの記憶をたどる。
家が空手道場だったこともあり空手の有段者である美羽だったが、美羽の通う高校には空手部がなく、とりあえずやってみたかった弓道部に入った。
そしてさらには、それなりに成績も残していたものの先に入学していたひとつ年上の従姉に強引に助っ人を頼まれ柔道部にも在籍させられていたのである。
武闘派といっても本人は(あくまでも自分的にはだが…)至って普通の女子高生、夢見る乙女だと思っている。
ただ、全国大会にまで、
それどころか、女子達からはボディーガード扱い!
それも仕方のない事かもしれない。
なにせ、美羽は空手は三段、柔道は二段、弓道と剣道も、それぞれ初段の腕前なのである。
「美羽様親衛隊」なる訳のわからない女子達によるファン集団までいる。
まあ、通学途中に変質者が現れても瞬殺でぶち倒しお縄にしてしまう頼もしすぎる美羽に”きゃっきゃうふふ”なラブ体験などあるはずもなく…。
健全すぎる体育会系の日々を送っていたのである。
あ~、そっか私の願望が夢になってるんだ!そーかそぉか。
(自分が儚げなお嬢様とかお姫様的なのになった夢?)
と、なんとなく納得の考えになった美羽は、それならば…と、夢の中を存分に楽しんでやろうとぼやけた頭で思った。
そろりと、ベッドからでる…。
現実には眠っているだろうせいか、やたら腕や体が重く感じる。
なかなか思い通りに動かない体を引きずるようにしてベッドから這い出す。
…と、天蓋のカーテンの隙間からまるで物語にでてくる王女様のように綺麗な女の子がこちらをみているではないか。
思わず目があってしまった。
うわっっ!びっ美少女ー。何、この
思わず美羽は、夢の中なのに目が覚めるような思いで少女をみつめた。
すると少女の方も、こちらをじっとみている。
美羽は慌てて口を開く。
できるだけ丁寧でやさしい口調で話しかけてみた。
こんなに儚げな美少女をがさつな自分が驚かせてはいけないと慎重に…。
「こんにちは、私は美羽…あ…貴女は?」
美羽が、そっと手をさしだすとコツンと冷たいガラスのようなものに手がぶつかった。
「え?」
なんと…鏡である。
「え?え?え?えええええー?」
「まさかの私?」と、美羽は驚く。
「この夢すごーい!」
鏡に映る自分の姿は、日本人ではなく、いやもう人外の精霊やら妖精やらといわんばかりの美しさである。
毛穴はあるのか?皮膚呼吸はどうするんだ!と言わんばかりの陶器のようなすべらかな肌。
桜貝のような淡いピンクの唇。
淡い光を放たんばかりのやわらかそうなふわふわと波打つ金色の髪。
豊かな髪は腰元まで伸び、瞳は晴れ渡る空を映した海のような青である。
(いやはや希望以上だよ。っつーか想像を絶するよ!いやあこの夢ハイスペック)と心の中で叫ぶ。
美羽は自分の頬にそっとふれてみる。
夢なのに触れる感覚もしっかり感じられる。
…っっごぉぉーい!なんて素敵すぎるこの夢。
あああああ~!
(すごいすごいの連発である!)
夢なのはわかってるから当分覚めないでぇーっ!と美羽は鏡の前で見悶えた。
すると、ドアを静かにノックする音がして…。
「姫様??」
メイドらしき女の人が恐る恐る窺うような声をかけながら部屋へ入ってきた。
あ、やっぱり私、お姫様なのね?
この夢の中では…素敵っ!と美羽は思った。
美羽は「おはよう」と、とびきりのご機嫌の笑顔でメイドらしき彼女に声をかけた。
すると彼女はものすごく驚いたように美羽をみた。
あれ?なんか間違えた???
「姫様っ!姫様が!」口元をおさえ涙目でうめくように何か感極まっている風である。
え?え?え?
「姫様が目覚められたっ!ああっ!良かった!神様っ」と、叫んだかと思うと持ってきていたらしい水差しの載ったトレーごとぶちまけて、来た方へ走り出した。
え?えええええー?
「姫様が姫様が目覚められました!誰かある!誰かっ。旦那様と奥様にお知らせしてー」
メイドのすごいテンションに驚いた美羽は、思った。
な、な、なんだ!
この夢?
わたしゃ眠り姫かなんかの設定?
と、思ってきょとん?である。
でも、とりあえず何だかドラマチックな感じなので、びっくりはしたものの引き続きこの雰囲気にあわせて楽しもうと思った。
なんだかドキドキワクワクな夢だなぁ等と、この時、美羽は呑気にもそう思っていたのだった。
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