第111話

「……気を引き締めて行けよ!お前ら……!」


「は、はい」

 

 視野を良くする。そんなな魔法を持った男は自分の隊を率いている隊長の言葉に頷く。

 今、魔法を持った男は第二防衛地点の砦の上に立ってこれから起こるであろう激しい戦闘に身震いしていた。

 ゲリラ戦はすでに終了。ここからは純粋な力と力のぶつかり合いだ。


「どうだ?敵は見えてきたか?」


「いえ、まだです……」


「そうか」

 

 魔法を持った男はその魔法を見て眺める。

 スミリア王国と神国メシアが接してる面積はあまり長くない。

 見晴らしの良い真ん中の砦ならば、その面積全てを見渡すことが出来る。

 視界を伸ばしすぎると疲れるので、普段はそこまで伸ばさないのだが、今はそんなことを言っている場合ではない。

 生きるか死ぬかの戦争でそんな舐めプは出来ない。


「……」

 

 魔法を持った男は痛む頭を我慢しながら周りを眺めつづける。


「……ん?」

 

 ずっと眺めていた魔法を持った男は砂埃と小さな何かを見つける。


「来た!」

 

 人影だ。


「来た!敵だ!見えた。……まだまだ遠いが見えたぞ!あっちからだ!」

 

 魔法を持った男は声を張り上げて叫ぶ。


「わかった」

 

 隊長は魔法を持った男では理解不能な謎の筒を取り出し、音を鳴らす。

 色のついた煙があがり、それを見て全員が動く始めた。


「最初のところ、俺らは弓兵だ。ローオス帝国のイグニス公爵家がたんまりと弓も矢も持ってきてくれたらしいから、好きに使って言いそうだ」


「なるほど……酒のように使ってもいいと?」


 魔法を持った男の隊の中で一番酒豪であり、度数の高い酒をまるで水のように飲む男が告げる。

 

「馬鹿野郎!」

 

 隊長は酒豪の男の頭を叩く。


「お前の酒のように使ってたらなくなっちまうだろうが!バカか!俺は今でも酒場の酒をお前が飲み尽くしたのを忘れてないぞ!」

 

 隊の中で笑いが起こる。

 ガチガチの緊張は溶かされていく。

 

 スミリア王国の防衛戦が始まる。

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