第107話

「は?え?……ほっ?」

 

 何を言っているのかわからない。

 そんな様子をアレシアは見せる。


「そっ……れは、本気で言っているつもり?」

 

 アレシアが僕のことを睨みつけながら問う。


「うん。本気も本気だよ。そもそもの話。帝国は元よりトイ王国があの魔導生物を出したというより、神国メシアがあの魔導生物を出したと思っていたからね」

 

 僕はパスタを頬張りながらなんでも無いかのように告げる。


「う……そ、うそ……そんな!」

 

 アレシアは信じられないと言わんばかりに眼を見張る。


「……多分ね。実際のところはわからないんだけど、トイ王国がやったというより神国メシアがやったと思っていたからね。ローオス帝国は最初から」


「……根拠は?」

 

 ジト目。信じられない、信じたくない、信じない。

 そんな視線。それを僕に向けられる。


「根拠?はっきりとした理由はないよ。ただの状況証拠。神国メシアが人工生物の研究が盛んで、トイ王国が盛んではない。トイ王国があの場面で人工生物を暴れさせる理由がない。神国メシアにはトイ王国を潰す理由があるしね。……一歩離れて事態を見ていたローオス帝国の王侯貴族たちは神国メシアによる陰謀だろうと思っているよ」


「そん、な……」

 

 あり得ない。そんな視線を僕に投げかけてくる。


「なら何で、なんでローオス帝国は動かなかったの……?」

 

 純粋な疑問が僕に向けられる。


「当時のローオス帝国はかなりごたついていたらしいですよ。なんかの事件があったとかで」

 

 僕は何気ない感じで話していく。

 慌てているアレシアと平然としている僕。

 対象的に会話を続けていく。


「そ、そう……」


「僕が知っていることは色々と話しました。それを受けてどう思い、どう行動するかは任せるよ」

 

 僕はパスタを食べ終え、席を立ち上がる。


「君がこれからどうするかは任せるよ。じゃあね」

 

 呆然としているアレシアを置いて僕は席を立った。

 種は撒いた。それが芽吹くかどうかは彼女次第。

 別に芽吹かなくても良いしね。……ここの重要度はそこそこである。

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