第106話

 ほどなくして、料理が運ばれてくる。

 流石と言うべきか。

 現代日本のファミレスに匹敵する速さである。


「それではごゆっくり」


「はい」

 

 料理を運んできてくれた店員が個室の扉を閉め、外に出る。


「美味しい……」

 

 僕はパスタを一口頬張り、感想を漏らす。


「そうでしょう?私のお気に入りのお店なのですよ。ここは」


「へぇー。良いセンスしている」


「そう言ってもらえると嬉しいわ」

 

 僕もアレシアも共に同じパスタを口に運ぶ。

 さて……ちゃんとお仕事もしなきゃだよね。

 僕は魔法を発動する。

 

 魔法とは法だ。

 

 加速と減速。加熱と冷却。炎と氷。

 魔法によって生み出された炎に燃やすぬものはない。万物を燃やし尽くす。

 燃やす対象は声だ。

 個室の外に声がもれないように、魔法を発動させる。


「ねぇ」

 

 僕はアレシアへと声をかける。


「はい?」

 

「魔導生物」


「……ッ!?」

 

 僕が告げたたった一つの単語。

 それにアレシアは声にならない声を上げ、表情を引き攣らせる。


「ふっ。とある国の、神国メシアとの国境線で何処かで見覚えのある魔導生物の姿を見た、という報告を受け取っている」


「……え?」

 

 そして、続く僕の言葉にアレシアは困惑の表情を浮かべ、何を言っているのかわからない。そんな声を上げる。


「もし、だ」

 

 そんなアレシアに対して笑顔で告げる。


「魔導生物がトイ王国が作ったものでなく、神国メシアが作ったものである、と言ったらどうしますか?アレシア王女殿下」


「……は?」

 

 呆然としたアレシアの声。

 それに続くように上がったアレシアの絶叫を聞いて声がもれないようにして良かったな、と思った。

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