第105話

 個室の中にいた人物。

 その人はアレシアだった。瞳の色も、髪の色も違うけれど確かにそうだ。間違いない。

 ……え?こんな偶然あるの?


「おや?お知り合いでしたか?それなら良かったです」

 

 店員さんが互いに見つめ合っている僕たちを見て、そう告げる。


「あ、はい」


「それでは。ご注文が決まったらそこの魔道具を押してお知らせください」

 

 店員さんがテーブルの上に置かれている日本のファミレスとかにあるようなチャイムのようによく似たものを示して告げる。


「それではごゆっくりと」

 

 店員さんが個室の扉を締めて、離れていった。


「……」


「あ、えっと……」

 

 僕は驚きで完全に固まってしまっているアレシアへと声をかける。

 ……驚いたが、まぁ良い。どうせもうそろそろ接触しようと思っていた頃なのだ。

 実に良いタイミングではないか。


「まさかこんなところで会うなんて……」

 

 僕が何かを言うよりも前にアレシアが言葉を告げる。


「だね……」

 

 僕のアレシアの言葉に同意する。


「えぇと……あなたもメニュー表見る?」


「あぁ。うん。見る」


 僕はアレシアからメニュー表をもらう。

 書かれているメニューはパスタやピザなどのイタリアン料理だ。

 どれにしようかな……。 


「決めた?」


「あぁ。うん。決めた。このパスタにしようかな、って」


「あら奇遇ね。私もこれにしようと思っていたのよ」


「お?マジで?……気が合うね。飲み物は何にする?」

 

「私はコーヒーにしようかと」


「おぉ。僕もそうしようかな、って思っていたんだよね。ちょうど。料理は互いに同じでいいかな?」


「そのようですね」


「じゃあ店員さんを呼ぼうか」

 

 僕はピンポンするやつへと手を伸ばした。

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