第95話
ローオス帝国、イグニス公爵領。
「神国メシア用の騎士団と、ローオス帝国内戦用の騎士団と、領の治安維持、防衛用騎士団の仕分けが完了しました」
「了解した」
ガイアの姿を模したフィーアは文官の報告に頷き、文官の提出してきた書類に判子を押す。
「では、神国メシア用の騎士団には早速出陣するように。目的地は最も神国メシアと仲の悪いスミリア王国。あそこは神国メシアと領土が接しているからな」
「了解しました!」
ガイアの命令に文官は頷き、仕事をこなすために執務室から出ていく。
とりあえずフィーアが確実に確認しなければならない仕事は完全に終了した。
今、イグニス公爵家は最も忙しい時間を過ごしていると言っても過言ではないだろう。
神国メシアを潰すために、各国にお金を貸しているだけでなく、商売の方でも実に大胆に動いている。
もはやイグニス公爵家が運営している商会は世界トップの商会と言って良いだろう。イグニス公爵家が持っている資産は王室に匹敵する。
もはや他の貴族とは格が違っていた。
最初はガイアが当主になることへ反発していた役人、使用人たちもフィーアの仕事ぶりを見てその評価を一変させた。
ガイアの父や弟、妹を担ぎ上げる作戦は全て無くなり、もはや冤罪でしかないガイアの父親は本当に犯した罪人だと信じられるようになっていた。
それに対して、ガイアは申し訳なく思っているものの、フィーアたちクロノスの面々はいい気味だと笑っていた。
クロノスの面々は自分たちが敬愛するガイアを馬鹿にされることを何よりも嫌っている。
「それで内戦用の騎士団はいつ動かすのでしょうか?」
「まだよ」
「……いつ動かすのでしょうか?一体何を待っているのでしょうか?膠着している今ならばどちらの陣営の味方をしても最高の地位に立てると思うのですが……」
「そもそもあの二人になど興味ない。……俺が一体誰を皇帝に据えようとしているのかわからぬか?俺が唯一味方した皇族は誰だ?」
「……?ッ!!!ま、まさか第二皇女殿下を!?」
「そういうことだ」
「な、何故?確かにあの御方は優秀ですが、女性に皇帝が務まるとは思いませんが」
「ふん。国など俺が一人いれば回る」
「しかし……わざわざあの御方を皇帝にする意味がわかりません」
「恩があるのだよ。ただそれだけよ」
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