第94話

 神国メシア。

 

 突如として起こった内戦によって若干ごたついている国である。

 だが、例え内戦が起きていたとしても神都が揺らぐことはない。

 しかし、今そんな神都が揺らいでいた。

 

 それを引き起こしているのは一人の存在だった。


「捕まえろッ!」


「逃げるなッ!」


「騎士は!?騎士はまだか!?」


 静まり帰る夜中に神都はこれ以上無いくらいに騒然としていた。

 衛兵たちが騒ぎ、一人の人影を追っていた。

 黒い服を身に纏った正体不明の人影。それは神都で堂々と盗みを働いていた。


 黒い人影は今宵も金銀財宝を奪い、闇夜へとその影を消した。

 

 ■■■■■

 

「いやぁー。随分とまぁ派手にやっているな」

 

 人影が降り立った場所に立っていた一人の男、ギリア族族長ギリエアが人影のことを出迎えた。

 

「それが私の役目ですから」

 

 人影、アインスはそれに対して素っ気なく返した。

 アインスはサクッと盗んできた金銀財宝を地面へと放り捨てる。


「後のことは任せました」

 

 ニコリとアインスは笑みを浮かべて、告げる。


「はいよ。俺らはこの金を使っていつもどおり好き勝手やれば良いんだろ?」


「はい」


「まぁ俺らには騎士ごっこよりも、略奪者の方が性に合っている。好きにやらせてもらうよ」

 

 ギリア族は北の民、略奪者らしく神国メシアで村々を襲ったりなど好き勝手にやっていた。そして、自分たちに恭順した領地に対してはこうして奪った金品で支援しているのだ。

 こうすることで、神国メシアという国を内部からボロボロにさせようとしていた。

 

 ギリア族や、アインスの他にも『クロノス』の配下たちが自由自在に動いていた。

 確実に神国メシアに対して出血を強いていた。


「フィーアは今頃どうしているかしら?ちゃんと計画通りに事が進んでいると良いのだけど……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る