第87話
「ば、かな……」
信じられない。そんな表情で固まり、呆然とする。
「あり得ないッ!!!貴様はッ!貴様はッ!!!神国がッ!神国メシアがあれをッ!!!魔導生物を作り、解き放ったというのかッ!!!自分の罪をッ!!!他人に被せるというのかッ!!!」
そして、絶叫する。全てを打ち消すように……絶叫する。
「知りませんよ。僕が生まれたのがいつだと思っているのですか?」
それに対して僕はどこまでも冷静に言葉を返す。
「私は当時の王室なんて知りませんよ。僕に出来るのは推察することだけですよ。『トイ王国で人工生物の研究が積極的に行われていない』『神国メシアで人工生物の研究が盛んに行われている』この二つの情報から推察することしかできませんよ。そして、導き出される答えは一つですよ。そもそもの話です。トイ王国では儀式級集団魔術の研究が主な研究でしたから。ローオス帝国に匹敵するレベルの儀式級集団魔術を研究する傍ら、あれほどの魔導生物を作るほどの研究を進められていたとは思えません」
「……詐欺師がッ!!!人工生物による被害はッ!神国メシアにも出ているのだぞッ!!!やる理由などないッ!!!」
「あるでしょう?」
「は?」
「簡単なことでしょう?自分たちの戦力を削らず、ローオス帝国と比較的に友好的であった自国と並ば大国を滅ぼすことが出来ましたから。これだけで、自国の人間を千単位で虐殺する理由としては十分ですよ?それにです。あの事件のおかげで神国メシアと、教会の影響力も拡大しましたから。やる理由としては十分ですよ?あなたも為政者なのならば、わかるでしょう?」
「……あ……あ……」
当主様が完全に硬直してしまう。
「当主様の考えは、また後日伺いに参ります」
僕はそう言って、席を立った。
そして、部屋から出るために扉をあける。
扉に集まっている多くの人たちが僕の視界に入る。
「え、えっとさっきの話は?」
僕のもとに向けられる疑問の視線。それに対して僕は笑顔を見せる。
「僕が話しているのは、あくまでローオス帝国の見解です。あなた方が聞くべきなのは当主様の見解でしょう?」
僕はそう言ってこの場を後にした。
呆然としている人たちを残して。
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