第88話
僕は一人余裕綽々という態度で宿屋に泊まり、紅茶を楽しんでいた……というわけではない。
紅茶を楽しんでいる、というのは本当である。
ただし、宿屋でというのが嘘なのである。
来客が来ないここには宿屋なんてなかったのである!悲しいね、実にね。
「あら、美味しい」
「でしょ?お気に入りの茶花なんだよね」
僕は目の前に座っている老婆の言葉に笑顔で告げる。
宿屋を見つけること出来ず、戸惑っている僕に友好的に話しかけてくれて、家に泊まって良いよ、と言ってくれた老婆の家にお邪魔することが出来たのだ。
「茶菓子はあったかしら……?」
「あぁ。僕が持っているのでいいですよ?」
僕は茶菓子を取り出して、並べていく。
「……あら?どこから取り出したの?」
「使用人の嗜みですよ」
僕はそんな疑問に対して笑顔で告げる。
僕と老婆は静かな時間を過ごしていた。
そんなときだった。
コンコン
家がノックされる。
「あら?誰かしら?」
「……多分僕のお客さんかな」
老婆に座ったままにしてもらい、僕はゆっくりと立ち上がる。
「いかがなさいましょうか?」
「……ここにいたのか」
扉の前に立っているのは当主様と騎士らしき人たちであった。
「えぇ。それで何のようでしょうか?」
「詳しく、話をしたい。君の口から。私の口ではなく。町民たちへと」
「……僕は使用人に過ぎません」
「だが、君は王族だ」
「僕は平民として育っています」
「それでも、だ」
「……それはあなたの仕事のはずだ」
僕と
「リーエ様」
そんな膠着状態の中、声が響く。
「おばあちゃん……」
「……申し訳有りません。……私は、メイドとしての職務を果たせませんでした……リーエ様のお母様を私は……」
「構わぬよ」
「これを」
僕に老婆はペンダントを渡してくれる。写真の入った。
「……っ」
僕は息を詰まらせる。
「いつでも私はあなたをお待ちしています」
おそらく、この老婆はリーエのお母さんに仕えていたメイドだったのだろう。だから、困っていた僕を助けてくれたのだろう。
「……あなたの忠誠心に感謝します」
少しの覇気を込めて僕は告げた。まるで王のように。
「……ッ!」
僕は感激に目を見張る老婆を置いて、僕は家を後にした。
「良いだろう。今、恩義が生まれた。それに報いるこそ貴き身分の仕事よ」
あとがき
新作です!見てくれると嬉しいです!リンクを踏むだけでも!!!
『異世界召喚されたけど、魔力なし、スキルなしで追放されたけど、元々ヤバい何かの霊に取り憑かれていたらしいせいか最強だったので何も問題ありませ……いや!問題大有りだよ!?取り憑かれているって何!?』
リンク 『https://kakuyomu.jp/works/16816927861334396719/episodes/16816927861370644302』
『エロゲの竿役に転生した僕は自分が死ぬというBADENDを回避するために、ヒロインたちから全力で逃げようと思い……あれ?なんかヒロインたちとの距離近くね?』
リンク 『https://kakuyomu.jp/works/16816927861333668648/episodes/16816927861370482663』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます