第78話

 悪いニュースは立て続けに続く。

 

 神国メシアで起きた内戦。

 そして─────ローオス帝国でも内戦が勃発した。


「あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!」

 

 その一報を受けた第二皇女が頭を抱えて叫ぶ。

 

「なんで!?なんでローオス帝国で内戦が起こるの!?」


「まぁ……ですがこれでお兄様たちも動けませんよ?」


 僕は第二皇女に向かってそう笑顔で告げる。 


「それで国が危険な状態に陥ってしまったら元も子もないでしょ!」


「……そうなるですかね?」

 

 僕は第二皇女に首を傾げる。


「そう簡単に国が危機的な状況になるとは思えません。確かに内戦は問題ですが、あくまで内戦の実態は皇子と皇子が勝手に、自分が持っている私有兵たちで戦いを始めただけに過ぎず、未だ宰相殿や国防大臣は動いているとの連絡を受けていません」」


「えぇ。そうね。でも私たちの国は属州を抱えている。それが今を好機として爆発し出したら……」


「現在属州の自治を牛耳っているのはイグニス公爵家当主であるガイア様であったはずです」


「……」

 

 僕の言葉を聞いて第二皇女がなんとも言えないような表情を向けてくる。


「僕は知りません。ガイア様の悪評の理由を知らないのです。ですから、僕にとってガイア様は先の件で圧倒的な手柄を手に入れた名君という評価なのでございます」


「でもあの子はねぇー。そんなに賢いように思えないよ。幼少期など本当にひど」


「そうでしょうか?」

 

 僕は第二皇女の言葉を遮って告げる。


「唯一イグニス公爵家だけは王位継承戦に巻き込まれていません。他の公爵家は王位継承戦に巻き込まれ、その支援のために少なくないお金を払い、少なくない損失を被っています。イグニス公爵家はそれらが一切ない。それどころか、王位継承戦を利用して商売に成功し、多額の利益を享受しています。そして、イグニス公爵家は最も大きなインパクトを残して表舞台にのし上がってきました。……僕にはガイア様があえて暗君を演じたようにしか見えません」


「……な、なるほど……。でもじゃあなんであの時だったのよ?」


「神国メシアで、ローオス帝国で内戦が起きました。ローオス帝国が最も危惧すべきは属州。しかし、今それを握っているのはイグニス公爵家。イグニス公爵家の選択で全てが変わる……これを偶然とするのですか?」

 

 僕は第二皇女へと尋ねる。


「そして、今。自由に、動ける第二皇女様。イグニス公爵家が最も恩を売ったお方は第二皇女様です。……あとはもうわかるのではないでしょうか?」


「……っ!?」

 

 第二皇女は驚愕に表情を染める。

 そして、


「内戦が起きた原因を詳しく教えなさい」


 雰囲気を一変させた。

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