第63話

「この馬は任せたぞ」

 

 僕は馬から降り、出迎えてくれた使用人に告げる。

 使用人の一番後ろに立っているのはお祖母様だ。使用人たちをうまく丸め込んでくれたのだろう。


「この子たちは僕の騎士だ。相応の対応をするように」

 

 僕はギリア族の面々をその場に置いておいて、屋敷の中に入る。

 お祖母様ならば彼らを適当に扱ったりしないだろう。


「「「お、おかえりなさいませ。ご主人さま」」」

 

 僕が屋敷に入った時、玄関に集結していた使用人たちが頭を下げる。彼ら、彼女らの声は震えていた。おそらく率先してお父様の味方をしたのがこの人たちなのだろう。


「すまないな。我が家のゴタゴタで君等を混乱させてしまって」


 僕はとりあえず謝罪の言葉を口にする。


「諸悪の根源たる父は我が直々に引導を渡してくれた。君たちはもう何も心配する必要はない。これからも我が家のためよろしく頼むぞ?」


「「「承知致しました」」」

 

 僕の言葉に使用人たちは深々と頭を下げた。

 彼ら、彼女らは僕が許した。だから、この人たちがお父様の味方をしていたとしても、それが原因で罰せられたりすることはない。

 すでに許されたのだから。


「では各自仕事に戻るように」


「「「承知致しました」」」

 

 僕の言葉に皆が頷き、離れていった。

 それを見て、僕は頷き、この場を離れて人の少ない部屋に入る。

 僕の後についてきた執事長も同じ部屋に入ってくる。

 

「何故ですか!あなたは……!」

 

 部屋の扉が閉められた瞬間、執事長が僕に詰め寄ってくる。


「反乱を起こすべきだと言ったではないですか!」

 

「あ?あぁ、そんなの嘘だよ」

 

 僕は平然と答える。


「は?」

 

 執事長は呆然と、アホ面を晒した。


「当たり前だろう……?何を言っているんだい?お父様が反乱を起こして、それを鎮圧すれば僕の当主の座は完全なものになるだろう?あぁ。我のためにお父様を焚き付けてくれて感謝しよう」

 

「あ……あ……」


 僕は二の句が告げられないでいる執事長を笑う。


「これからもよろしく頼むよ?執事長」

 

 呆然と、何も出来ずにいる執事長を置いて僕は悠々と執務室に向かう。

 さぁて、この後は『クロノス』の円卓メンバーと会合だ。みんなはすでに集まっているかな?

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