第57話

「こ、これはこれはガイア様……よくぞ」

 

 貴族である男はゆっくりと立ち上がり、僕に向かってペコペコ頭を下げる。

 この男の名はマキベラ。

 第五皇子陣営の貴族の一人だ。属州の中でもそこそこの領地を持っている貴族で、かなりの量の金貨を溜め込んでいると思われる貴族だ。

 まぁ、今回の王都王立裁判所の結果を受けて自ら申し入れた罰金額の金額はマキベラが持っている金貨では足りないくらい膨大なんだけど。


「うむ」

 

 僕は尊大に頷き、上座の大きなソファーへと腰掛ける。

 マキベラは僕の向かいの小さな席にすとんと座る。


「……ぶっ」


「?」


 思わず吹いてしまった僕にマキベラが首を傾げる。

 不意打ちはやめろし!

 横幅の広いマキベラが小さな席に座ったことにより、マキベラが小さな席にすっぽりと埋まった。ちょっと可愛い。

 きつくないのか?めちゃくちゃきつそうなんだけど。


「良くぞお越しに」


「うむ。話はすでにわかっているよな?」


 僕はそう言って持っていた白金貨がたっぷりと入った袋を机の上に置く。

 金貨よりも価値の高い白金貨が大量に。

 これはマキベラが所有している全財産よりも遥かに多いだろう。

 公爵家にして、クロノスとしての収入源もある僕が持っているお金は実に膨大。その量はローオス帝国の国庫に匹敵するくらいだ。


「お前が今回の件で負った罰金。このお金を使えば返せるだろう。……後はわかっているよな?」


「も、もちろんにございます……」

 

 マキベラはペコペコ僕に頭を下げてくる。


「あなたに永遠の忠誠を誓わせていただきます……」


「うむ。汝の働きを存分に期待しておるぞ?」


「は、はい……」


 マキベラは僕の言葉に頷く。


「ではな」

 

 僕は帰るべく席を立ち上がる。

 

「ふんっ!」

 

 それに合わせてマキベラも立ち上がろうとするのだが……席にきれいに埋まっているせいで立ち上がれないようだった。

 馬鹿なのか?

 隣にちゃんと座れそうな大きなソファーあったのに。少し僕に配慮しすぎじゃないか?

 

「これからよろしく頼むぞ」

 

 僕はマキベラに向かって自然な形で手を差し伸べる。


「は、はい」

 

 マキベラが僕の手を掴み、僕はそのままマキベラをサクッと引き上げる。


「なっ!?」


「ではな」


「あ、ありがとうございました……」

 

 僕はマキベラを置いて屋敷から出た。

 ちなみに僕にお供の人間はいない。僕は王都に一人で来ているからね。

 他にも僕が交渉しなければいけない貴族がたくさんある。

 さっさと終わらせなければ。

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