第53話

「なるほどねぇ」

 

 僕は裁判長から概要を聞いて頷く。

 うん。全て予想通りかな。あー、良かった。最近読み外しまくるし、想定外の事態にぶつかり過ぎだし。

 今回もダメかな?って思ったけど予想通りで安心した。


「そして、今。我ら公爵家からの意見を聞いているというわけだな?」


「はい。そのとおりです」

 

 僕の言葉に裁判長が頷く。


「ふむ。では問おう。証拠はこれだけか?あまりにも弱すぎるのではないか?」


「何を言うかッ!」

 

 僕の言葉。

 それに真っ先に反応して立ち上がったのは第五皇子その人だ。


「魔物を操り、襲わせるなんていう芸当は常に


「それはあくまで推察でしかならかろう。彼女がやっという確たる証拠は何処だ?そもそも彼女には動機もないだろう?」


「そんなもの!捕まえた後で吐かせればい良いッ!」


「なぜ裁判後に吐かせる?裁判前に吐かせるべきだろう?証拠を揃えてから裁判は行うのだぞ?それすらもわからんのか?随分と衰えたものだな。まだ若いのに」


 裁判前に情報を吐かせ、証拠を集めてから裁判を行う。それが普通だ。

 だけど、別に貴族、王族相手なら裁判後に情報を吐かせることはよくあることで、珍しいことではない。貴族、王族に対して拷問なんて出来ないからね。

 この世界に冤罪者を作らない!という強い意思はない。何だったら率先して冤罪者を作っていくのが貴族たちだ。自分たちの犯罪行為を隠すために。


「なっ……!なっ……!」

 

 僕に貶された。落ちこぼれである僕に。

 それは第五皇子の自尊心を大きく損ねる。


「貴様ッ!誰に向かってッ!私は第五皇子たるぞ!」


「我は公爵家当主だ。我が頭を下げるのは皇帝のみよ」

 

 不遜に、傲慢に。

 僕は上から第五皇子である彼を見下ろす。

 

「なっ!私はいずれ皇帝になるものだぞ!」

 

 第五皇子は叫ぶ。


「ふっ」

 

 僕はそんな第五皇子の言葉を鼻で笑う。


「貴様が?皇帝……くっくっく。笑わせてくれる」


「何がッ!」


「第二皇女の裁判。こんな下らぬ茶番よりも聞きたいことがある」

 

 僕は持ってきていた書類をテーブルの上に乗せる。


「第五皇子が闇の組織『クロノス』と繋がっていたという資料だ。この中には第五皇子と『クロノス』の間で取り引きされた『魔物を興奮させる薬』というご禁制の品についても書かれているぞ?」

 

 僕の一言。

 それに裁判所内には動揺が走った。

 

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