第43話

 意味わからん意味わからん意味わからん。

 

 僕は一人。

 自室で頭を抱えていた。

 その原因は簡単で、アインスの


「『クロノス』の支部の一つをガイア様の名の元に潰しておきました!第五皇子と『クロノス』の致命的な交渉の印をガイア様が奪還保有している状態です!」


 この一言が原因だ。全ての原因だ。死ね。

 第五皇子の目的。それはローオス帝国の中央貴族からの支持を受けることだ。

 第二皇女は中央貴族から結構な支持を受けている。力も強く、頭も良い天才タイプ。なんか勝手に作っていた商会でボロ儲けして、そのお金を元に借金などで苦しんでいた爵位の低い中央貴族からの支持を集めているのだ。そして、その支持は広がっており、そこそこの爵位を持つ貴族の支持も受けている。

 第二皇女がどこかの皇子の陣営につけば、この貴族たちもその皇子へと恭順するだろう。


 第五皇子の計画。

 それは第二皇女を自らの妻とすることだ。近親婚など前世の価値観を持っている僕からすれば忌避感を抱かざるを負えないが、この世界では別に近親婚など珍しくない。よくあることだ。

 第五皇子は第二皇女へと適当な罪をふっかけ、そしてどん底へと落ちた第二皇女へと手を差し伸べることで中央貴族からの支持を集めようとしているのだ。

 第五皇子はこんな作戦に出ざるを得ないぐらいには追い込まれている。第五皇子は国内から全然人気がなかったのだ。そして、その人気は一切上がっていない。

 こんな状況に嫌気が指したのだろう。

 それを打破するためのこの作戦だ。

 この作戦を行うに当たって第五皇子は『クロノス』と取引を行っていたのだ。


 そして、アインスはその証拠を苦労の末にイグニス公爵家次期当主が手に入れた。というストーリーを勝手に作ったのだ。


 完全に部下が暴走した。アインス曰くスキア様には評価されてほしいということだ。

 信じられねぇ。なんで部下が上司を裏切るんだぁ。

 なんで……なんで……うん。

 いや、わかるのだ。

 確かに。確かに現状僕が手にしている手札を使えばイグニス公爵家にとって最大の利益を獲得し、僕の凄さを知らしめるという結果を得られる。そんな手段を取れる。いや、取るしかもう道は残されていないというのが正しいのだけど。ヤバい。泣きそう。

 確かにアインスたち的にはこのストーリーが一番正解だったのだろう。


「うぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

 僕は不貞寝することにした。

 もう嫌。

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