第35話
僕は王都の端。
もうほぼほぼスラムと言っても差し支えないような場所に建てられたボロボロの家。
僕はそこにいた。
ここは元々『クロノス』の円卓のメンバー筆頭であるアインス。彼女がアインスと呼ばれるようになることになる前、彼女がまだリーエとして過ごしていた家。
彼女は生まれたときから両親がいなかった。
彼女はおばあちゃんに育てられていたのだ。そして、おばあちゃんが死んだ時、リーエは天涯孤独の身となってしまった。そして、スラムに迷い込み奴隷として捕まえられて売られそうになっていたところを僕が助け出し、彼女にアインスという名前を渡し、クロノス円卓メンバーの筆頭としたのだ。
今の僕はちょっとしたとある事情でリーエの名前を借りて学校に通っている。
なので、僕は王都にいる時は基本的にここで生活しているのだ。
「ふんふーん」
僕は買ってきた串焼きを食べる。
別に美味しくはない。前世日本、貴族として生きてきた僕にとって硬いし、臭いしめちゃくちゃ美味しくないお肉だ。でも、雑草とかよりはマシ。
僕が優雅に夕食を取っていると、
コンコン
扉をノックする音が聞こえてくる。
……。誰、かな?
「はーい」
僕は若干の嫌な予感。まさか……そんな気持ちのまま玄関に向かい、扉を開ける。
「やぁ。君がリーエくんかな?」
「は、はい」
うへぇー。
本当に来やがったよ。こいつ。
僕は目の前にいるこいつを見てげんなりとした気分を抱いた。
「ちょっと入っていいかな?」
「どうぞどうぞ」
僕は困惑した表情を作りながら、この人を家に招き入れる。
明らかにこんなところにいたら目立つである高そうな服に、整った見た目。
一目見れば普通の平民じゃない。貴族、もしくは大商会の商会長クラスの人であると見て取れるだろう。
実際にこいつは──────
「あぁ、自己紹介をしていなかったね。すまない。私はエリュンデ公爵家の当主さ。よろしく頼む」
とんでもない大貴族なのだ。
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