第26話

「え……?」

 

 僕の言葉に第三王女が驚きの表情を見せる。

 

「え?私の体が目的じゃないの?」


「……平民である僕が第三王女殿下の御身を狙うなどと。そんな不敬出来るはずもございません。僕は第二王女殿下の命を受けてここに立っています。第二王女殿下のお顔に泥を塗るような行為をするなどありえません。ましてや第三王女殿下は僕の主人である第二王女殿下の家族にございます。そんな御人を僕が傷つけるなど許されるはずもございません」


「そ、そう」

 

 僕の答えを聞いて第三王女がしどろもどろになる。

 その頬は少し顔を赤い。まぁ自分の勘違いであんなことを口走ったわけだからね。


「僕が何故第三王女殿下がそういう誤解をなさったのかはお聞きしません」

 

 ここで第三王女から貴族たちの愚痴を聞かされたくない。僕の平民としての立場が怪しくなってしまう。

 『リーエ』は少し特殊なのだ。


「じゃ、じゃあ!」

 

 第三王女が話をすり替えるかのごとく大きな声を出す。


「何が目的なの?私が風神であることを知り、今ここで私にそのことを教える理由。なんであなたはそんなことをするの?」


「別に難しい話ではありませんよ?まず。大前提として第三王女殿下は死亡者を減らしたいというお考えであることに間違いないですか?」


「えぇ。そうよ。たとえ、我が国の民じゃなかったとしても、彼らの命はそんな簡単に奪って良いわけじゃないわ。……彼らがあぁなってしま」


「すみません」

 

 僕は第三王女の言葉を遮る。こいつは今とんでもないことを口走ろうとしていたぞ?遊牧民の歴史。この国で長年秘匿されている汚点の一つを平民である僕の前で言おうとしやがった……。信じられねぇ。


「それ以上はお聞きしません」


「あ、そうね。ごめんなさい」


「では、話を続けますね」


「えぇ。お願い。ごめんね?」


「いえ、構いませんよ?」

 

 全然構うけどなぁ!?大事なことをぽろりしようとするなぁ!

 

「私はいたく感銘を受けたのです。その素晴らしい心意気に」


「……何?」

 

 僕の言葉が胡散臭かったのか、第三王女が僕に疑いの視線を向けてくる。


「私は素早く対応するように第二王女殿下より命令を受けています。そのための行動を私は行うまでです。誰も死なず、早期に解決出来るのであれば是非したいところです」


「……なるほどね」


「僕にいい案があります。お聞きになりませんか?」

 

 僕は意味深な笑みを浮かべて、告げた。

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