第27話
「いい、案?」
「はい。そうです」
僕は第三王女の言葉に頷く。
「簡単な話ですよ。彼らが僕たちの国を襲う理由はなんでしょうか?」
「えぇ……と。食べるものがない、とか?」
「はい。そうですね。食べるものがない。それが最大の理由でしょう。なぜ食べるものが無いのでしょうか?」
「え……?」
「これくらい即答してくださいよ……。まず最初の理由としてあげられるのが住居がないということですよ。それに仕事もないんですよ。彼らが遊牧民となった理由。それは僕たちの国が遊牧民の人たちの仕事を奪い、住んでいた土地を奪ったからに他ならない」
「……そうね」
僕らの国の負の遺産とも言えることだ。過去の大戦。それが残した爪痕は酷く大きかった。当然領地も奪い、一定数の少数民族を差別し、迫害をしたりなんかもした。その一つの民族の末裔が遊牧民である。
北の遊牧民。
それは僕らの国が過去、追放した少数民族の末路。
僕の前世にいた遊牧民とは根本的に違うのだ。彼らはモンゴルのような脅威になることはない。
「僕らが奪ったもの。それをまた渡して上げればいいんですよ。仕事を、住む場所を再度彼らに渡してあげればいい。交渉によって話を終わらせればいいんですよ」
「な、なるほど」
「このまま進めても互いにいいことなんてないです。それは向こうだって同じのはずです。たとえその相手が嫌いな相手であったとしても、自分たちがそうなった原因の人間であったとしても。彼らはきっと一度は交渉の場につくはずだ。そうならざる終えない。わかりますか?」
僕は第三王女に笑顔を向けた。
素晴らしい笑顔を。
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