第24話
「え……?」
僕の一言に第三王女は固まる。
「な、何をい、言って?」
第三王女はめちゃくちゃ震えた声で言葉をリピートする。
めためた震えとる。
おもろい。
「聞こえなかったのでしょうか?ご自身が風神であることもバラしてはいかがでしょう?と言ったのですが」
「はぐき!?」
「はぐき?」
僕は突然の第三王女の叫びに首を傾げる。
なんではぐき?
「な、な、な、と、とちゅつぜん何をい、言い出すの?」
「その動揺が何よりも物語っていると思いますが?」
僕は笑みを浮かべる。
「……」
黙り込んでしまう。第三王女は。
「……どうして」
ぽつり。
「どうしてわかったの?」
第三王女は感情の抜け落ちた瞳をこちらに向け、問う。
「別に何も難しいことではありませんよ。僕はここに配置されている軍の能力と、敵である遊牧民の能力を知っているだけです。遊牧民を撃滅出来ない理由がないんですよ」
「……それは……風神のせいで」
「何故風神は遊牧民の味方をするのですか?そして、風神はいつ現れたのですか?」
「……」
第三王女は答えない。
「答えられないなら僕が代わりに答えましょう。風神が現れたのはあなたが率いる援軍がガナダルシア砦が到着した段階ですよ」
「……遊牧民が絶滅してほしくない人がいる。それが風神だ。そいつは私たちが現れたことで遊牧民が絶滅されることを予想し、それを止めるために動き出した」
「なら何故こちらに死傷者は出ていないのですか?軍をたった一人で足止め出来るような人を相手に、こちらが誰も死んでいないというのは不自然でしょう。それに、指揮官が焦っていません。たった一人に食い止められ、失態を晒し続けているというのにです。本来ならばもっと焦り、対策を講じようとするでしょう」
「……」
「ただの予想ですよ。あなたがここに来たタイミングで現れた風神はこちらの人間を誰も殺さず、この指揮官たちは風神に対して何の対策も取ろうとしていない。僕はあなた以外に風神を名乗れる人を知らないんですよ」
拷問。
以前した拷問で、彼らは風神の正体を知らず、心当たりも知らなかった。そして他国の人間が動いた。という報告は受けていない。僕が把握できていない組織など教会くらいだ。
しかし、教会がこんなくだらないことに戦力を割り振ったりしない。
「……」
第三王女はこちらに何の感情も宿さない瞳を向けてくる。
「まだ。風神が遊牧民の味方をする理由を話していなかったですね」
僕は動き出した第三王女の腕を止め、耳元に囁くように告げた。
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