第23話

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!?」

 

 書類の束から落ちてきた手紙。

 そこに書かれていたのはたくさんの男たちからの熱烈なアプローチ。

 第三王女はその恋文をあろうことかただのメモ用紙として活用していた。


「え?」

 

 僕が驚いているふりをしている間に第三王女が僕の手から恋文を強奪する。


「え?」

 

 僕はもう一度疑問符を口にする。


「……何も見ていませんよ?」


「いや、流石にその誤魔化しは無理じゃないですか?」


「……」


 答えない。

 第三王女は僕の言葉には答えず、沈黙を保っている。

 ずーっと沈黙し続ける。

 ……。

 …………。


「何も見ていませんよ?」

 

「いや、流石にその誤魔化しは無理じゃないですか?」


「……」

 

 長い長い沈黙の末また同じことを繰り返す。


「何も」


「もういいですよ?」

 

 続きは言わせない。

 ちゃっちゃと終わらせて、こんなところおさらばしてしまいたいのだ。


「……にゃー!!!」

 

 第三王女は猫のような奇声を上げ、椅子の上に立ち、跳躍。

 目の前の机を乗り越え、この部屋に置かれているソファーに突っ込む。


「???」


 僕は突然の奇行に首を傾げるそぶりを作る。


「へーんだ。もういいもん。諦めた諦めた。私はこんな不真面目な王族だよー」

 

 ピッ

 水属性と風属性を組み合わせることによって作れる氷魔法を発動させ作り出した杖を僕の首元に突きつける。


「あまりおいたはだめよ?王族たる私が


「第二王女様により送られた僕を殺せるのならどうぞお好きなようにしてください」

 

 殺せない。

 殺せるはずがないのだ。

 何の功績も持たないお飾りの王族が、女という立ち位置にも関わらず圧倒的な功績を残し続けている第二王女の手駒として派遣された僕を殺せるはずがないのだ。


「もぁー!素直じゃないわね!もう少し驚きの表情を見せなさいよ!」


「では僕が驚くようなことをしてみてください」


「はぁー!?何なのよ!もー!生意気ね!」

 

 第三王女が怒りの表情を見せる。


「もうあなたの前で猫を被るのはやめるわ。ずっと演じているのも疲れるしね。私の本性はこれ。他の人にバラしたりしたら許さないんだからね?」


「なるほどなるほど」

  

 僕は第三王女の言葉に頷く。

 

「では、ご自身の本性をバラしたことですし、ついでに」



「風神が自分であるということもバラしてみてはどうでしょう?」



 僕はようやく本題に踏み出せた。







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