第4話
紙束に書かれているのは日本語。
この世界では見ることなんてない日本語だ。
だからこそ自由に何でも書ける。書くことが出来る。
この紙束に書かれているのは僕の策略・謀略に前世の知識。他の人には決して見せられないような内容がここに書かれている。
僕しか知らない日本語は暗号として完璧な仕事を果たす。
紙束は、一応僕が前世、父親の嫌いな事務の仕事を押し付けられて類整理などをしていたこともありそこそこキレイにまとめられているはずだ。
前世の僕の父親はまぁ所謂ヤの付く人で、父親のせいで色々と大変な思いをしてきたものだ。
わけのわからん奴らから命取られそうになったり、警察の人と一緒にご飯を食べるくらいにまで仲良くなってしまうほどの状況が作られたり、授業参観に来てクラスを騒然とさせたり。
そして、父親は組でもそこそこの地位の人間であり、そして父親が出来るだけ普通の子供のような育て方をしようとしたせいで、普通の子どもともヤクザの子どもとも違う謎の教育を受けた僕は謎の子どもへと成長することになったし。
まぁ父親がヤの付く人だったからこそこんな世界に来ても全然余裕で戦えるみたいなところもあるから文句を言いにくいのだけど。父親がヤの付く人ではなければここまで無双することはできなかっただろう。
……あれ?
でも僕が前世で死んだのは家が他の組の人間に襲われたからであって、そもそも父親がヤの付く人じゃなかったら僕は死んでいない?
ラノベ、漫画、アニメの続きが見れた?
……。
…………。
やっぱ父親クソだわっ!
そんな昔の話に思いを馳せながら羽ペンを動かす。
使いにくいペンで書きにくい紙に全然知らない文字で文章を書くのにももう慣れたものだ。
「まぁこんなものかな」
10年先の未来予想図を元に、今後『クロノス』の運営をどうするかを書類にまとめ終える。
とはいえ、内容はうっすうっすなのだが。
そもそも『クロノス』の運営は僕じゃなくてアインスがしているような状況だし……最早諦観の域に達している。
僕は。
『クロノス』をこの国を裏から支配する巨大組織へと成長させる夢はなんとしても諦めないが。
何なら円卓のメンバー以外の幹部を作り、全然別の指揮系統を作ってみても良いかも知れないし。
くくく。
諦めないぞ。
ここまでの組織に育て上げるのにかなり苦労したのだ。
これしきのことで諦めてたまるか!
心のなかで熱き炎を燃やす。
ぎゅるぎゅる。
僕のお腹が軽快な音をたてる。
「……お腹すいた」
僕は立ち上がった。
何か食べ物もらお。
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