第3話

「どう思いますか?スキア様?」


「はえ?」


 僕がぐるぐると内心頭を回していると突然話を振られる。

 アインスが僕に視線を向けている。

 やっべ、何も聞いていなかった。 


「え、まぁ、ええんちゃう?」

 

 とりま僕は頷いておく。

 

「ありがとうございます!」

 

 アインスは溢れんばかりの笑顔を僕に向けてくる。

 

「それでは滅ぼされた村の復興を手伝い、二度とこんなことが起きないように防衛できるような施設の建設を行うということに決まりました」


 あ、結局そうなったのね。

 まぁ許可しちゃったし今更だめって言うつもりもないけど。

 ……ほんとどうしてこうなっちゃったんだろう。

 秘密結社なはずなのに。表立って出来ないことをこっそり裏でやるのがこの組織の目的なのに。

 目立っちゃだめなのに……。

 ……義賊として『クロノス』が暴れる……いやいやなんで自領に義賊作ろうとしてんだよ!

 要らんわ!義賊なら他の国でやってくれ。


「あぁ、見込みがありそうな奴は奴隷落ちさせておいてくれ。こっちで鍛える」

 

「はい」

 

 僕の言葉にアインスは素直に頷く。

 元々奴隷だった彼女に奴隷を作るように頼むのは心苦しいが、これもそれも全てイグニス家のためだ。

 我慢してもらわなくていけない。

 奴隷は便利だからね。

 『クロノス』の一番の目的は奴隷を仕入れることだし。

 流石に大量に奴隷を買い漁っていたら何事かと周りの貴族から警戒されちゃうからね。


「じゃあ『クロノス』の定例会議を終わりにしようか。おつかれー」

 

 僕は話が終わったことを確認し、定例会議の終わりを告げた。

 席を立ち、魔法を使ってサクッと自室へと転移した。

 

 ■■■■■

 

「あー」

 

 僕はベッドに倒れる。

 ぎしりとベッドが嫌な音をたててきしむ。


「はぁー」

 

 イグニス公爵家の長男である僕のベッドなのだ。

 当然のような豪華絢爛。ちょっと豪華過ぎて目が痛くなるくらいだ。

 天蓋も普通に邪魔だ。

 木の板に藁を引いただけの庶民のベッドよりは寝心地が良いが、前世のベッドと比べれば寝心地はお察しのとおりである。

 前世は一人の日本人オタクとして異世界転生に憧れたものだが、そもそも文明レベルが著しく低い世界に転生したところで人生ヌルゲーの現代っ子である僕がこんな不便な世界で生きていくなんて大変なことしか無い。

 女だって好きに抱けるようになるのにもかなり時間がかかったし。

 今じゃ自由だけど。

 

「あー」

 

 僕はゆっくりと体を起こし、机に向かう。

 この世界では貴重な紙を引き出しから取り出し、羽ペンを握った。

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