魅力的なキャラクターって? 設定編

 お題「キャラクター」の第二話です。


 前回はキャラクターの名前について解説しました。

 今回はいよいよキャラクターの本筋となる、設定編です。


 設定を考えるのってかなり楽しいと思います。好きな要素を詰め込んだり、面白そうな設定を盛り込んだり。決める事はいっぱいあって、でもそれを上回るほどてんこ盛りなキャラクターを作ってしまう。なんて事を経験した読者の方も多いのではないでしょうか。


 ですがそんな設定も、実は本をただせば必要な設定は二つの要素まで絞り込む事が出来ます。


 それは「性格」と「立場」です。


 まず一つ目の性格。こちらはキャラクターの基盤であり、なぜ必要か何となく分かる方もいると思いますが、改めて紹介します。


 性格とはズバリ、喜怒哀楽といった感情の方向性を決める、キャラクターのエンジンとなる要素です。


 例えば嬉しい事があった時、読者の方はどんな喜び方をしますか?

 内容にもよるとは思いますが、快活な人であれば声を上げて喜びを表す。落ち着いた人であれば胸の内で噛み締める。臆病な人であればホッとして思わず胸を撫でおろすなど、喜びという感情一つでも性格によって喜び方は様々です。


 では逆に怒りたくなるような時はどうでしょう。

 カッとなって手が出る人、嫌味を吐いたり嫌がらせで抵抗する人、言い返したり何かに当たる事も出来ずただただ落ち込む人、そもそも面倒事を起こしたくないため怒りの感情を表さないようにしている人。などなど、怒り方にも性格は表れます。


 では今の喜び方と怒り方を見比べた時、どんな反応をするか何となく繋がりが見えませんか?

 声を上げて喜ぶ人は、怒った時も態度に出そうだな、とか。胸の内で喜ぶ人は、怒った時も見えない場所で仕返しをしたり、もしくは怒らないように怒りの感情を見えないようにしたり。


 魅力的なキャラを見て、そう反応するとは明言されていないにも関わらず、しかしこんな反応をしそうと思えるのは、この性格という基盤が用意されているからに他ならないのです。


 ○○キャラ。という表現を聞いた事はないでしょうか。ツンデレキャラ、クールキャラ、脳筋キャラ、インテリキャラなど。その枠に入るキャラは、上記で述べたようにこんな反応をしそう。と予測しやすいと思います。


 そう、それは○○キャラという似た性格があってこそ。その性格は魅力的なため多用され、ひとまとめに出来るほどキャラクターが増えております。それほどまでに、しっかりとした性格という基盤のあるキャラは魅力的に映るのです。


 しかし、○○キャラに分類されるキャラクター達は皆全く同じ性格をしていますでしょうか。

 例えばツンデレキャラであれば、照れ隠しとして相手を叩いたり殴ったりするキャラもいれば、悪口や軽口を吐くキャラもいます。それに、あまのじゃく的に思っている事と逆の事を言ってしまうキャラもいるでしょう。


 今、同じツンデレという性格なのに何故? と思いませんでしたか。

 そうです。ここが二大要素「性格」に関する重要な部分なのです。


 ○○キャラのテンプレのようなキャラを作ってしまうと、既存キャラと被ったり予想の範疇を超えなかったりしてそのキャラ自身の魅力には繋がっていないのです。


 ではどうすれば魅力的な性格のキャラクターを作る事が出来るのでしょうか。

 もう答えは分かっているはずです。最初に触れた、喜び方や怒り方を思い出してみて下さい。そして先ほど触れた、○○キャラと合わせて考えるのです。


 魅力的なキャラを作るには○○キャラというテンプレに縛られず、このキャラはどうするか。という性格の基盤に従ってみて下さい。

 非力なツンデレキャラは、殴るより言葉で言い返しそうとか。頭の良い脳筋キャラなら、力の方が優秀であると信じて力技を使うのだろうとか。○○キャラに収まらない魅力の部分を大いに表現する事が出来ると思います。


 ただし一つだけ、忘れてはならない事があります。

 このキャラはどうするか。という部分に縛られて、突飛な言動に移らないようにして下さい。


 キャラクターのやりそうな事を考えた結果、テンプレ通りのアクションを起こすなら、それはそのキャラの性格なのです。

 似た思考のキャラが集まって○○キャラという分類がされているので、テンプレ通りの行動を取る事は不思議ではないのです。しかしそこに、その中にこのキャラクターならテンプレ通りには絶対に動かない。と思う部分を見出して下さい。それが、それこそがそのキャラクターの魅力となるのです。


 そうして性格の部分が定まれば、自然とキャラの言動は分かって来るようになります。言動が分かってしまえばその延長線上に何をするとかしたいとか、こんな決断を取ったとかこういった技や術を好みそうなど、必要な設定はどんどん決まって行くと思います。


 なので、決めるべき設定の一つは「性格」であると私は考えます。

 一つは、と言う通り、何か忘れていないでしょうか。


 はい、ここでもう一つの決めるべき設定の「立場」が関わって来ます。


 いくら性格上こんな行動を取りそうだと考えても、そのキャラに定めた立場を考えてみて下さい。

 好戦的なキャラだとしても、先に手を出せば処される立場で先に攻撃を仕掛けるでしょうか。

 臆病なキャラだからといって、皆が皆大事な会議や発表の場から逃げ出す事はありますでしょうか。


 立場とは役職や職業だけではありません。


 同じ家族でも親や子、配偶者のように相手との関係性が違えば多少なり行動に差が現れると思います。

 同一のキャラであっても、子供時代と青年時代、そして老後においては物事に対する考えが違って来るはずです。


 どんな性格か決めた後は、そのキャラの立場も考えどんな言動をするか予測してみましょう。

 生意気キャラであっても全てにおいて生意気なのか、それとも生意気なのは近い上司と同僚の前のみであったり、敵や格下と見た相手のみであるなど、言動の細部は性格と立場において変わって来ると思います。


 性格と立場、双方を鑑みてどんな言動をするか考えてみると、キャラクターの設定は次々に埋まって行くと思います。


 ですが最初に触れたように、キャラクターを考える上でこの二つの設定を真っ先に決める必要は無いのです。


 例えば見た目や口調から考えて、どんな活躍をするか考える。すると、見た目から趣味が伺え、口調から腹の底の本音が見えて来ます。

 趣味や本音の部分からどんな性格のキャラクターなのか想像し、そのキャラがしそうな言動と活躍をすり合わせて、最後に立場というフィルターを掛けるとこのキャラの細部が見えて来るでしょう。


 考える順番を変えても、決めた設定は必ず性格か立場に繋がっているはずです。

 また、性格を考えればどんな立場に着くかある程度予想出来ますし、逆に立場が性格を変える事だってあります。性格と立場は常に同じではないですが、変化した二つは過去と未来のように地続きであると意識する事が大切です。キャラクターにも私達と同様、過去があって今があり、そして未来を見て生きているのですから。


 以上のように、どんな切り口からキャラクターを考えても「性格」と「立場」を決めれば魅力と統一感の両立するキャラクターを生み出す事が出来ると私は考えます。


 今回の「設定」解説により、前回の「名前」と合わせて魅力的なキャラクターの作り方は伝わったと思います。しかし今回はまだ全四話中の第二話。つまり後二回「キャラクター」編を残しております。


 では何を解説するのか。今まで解説したのは魅力的なキャラクターの作り方です。

 そう、キャラクターはまだ生まれたばかりなのです。


 第三話と四話では、魅力的なキャラクターの動かし方について解説致します。

 まだまだ続くキャラクター編。次回もお付き合い頂ければ幸いです。

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