心理描写ってなんだ? 哀楽編
お題「心理描写」編の後編こと哀楽編です。
喜怒編では怒る魔王と喜ぶ勇者を題材に説明しました。
なので今回も哀と楽の感情を使ったワンシーンから、心理描写のやり方を考えてみたいと思います。
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とある一軒家の一室にて。
「トモちゃん~~~!! 来週から二年生なんだよ? 私はどうしたらいいの……」
涙声を上げながら、女の子は哀しみに明け暮れていた。
「大丈夫だってヒロコ。心配する事なんか別にないじゃない」
トモちゃんと呼ばれた女の子は、ヒロコとは対照的に気楽な態度でいた。
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はい。またしても即興で思いついたワンシーンです。
進級一週間を前にして哀しみの感情に襲われたヒロコと、彼女とは逆にあっけらかんとした態度の友人、トモちゃんの会話となります。
喜怒編でも話したように、これではヒロコが哀しんでいるのと、気楽なトモちゃんが同じ部屋にいるぐらいしか分かりません。
何故ヒロコは進級が哀しいのか、そしてトモちゃんはそんな彼女を前にしてお気楽なままなのか。
それぞれの視点から考えてみましょう。
まずヒロコは、何が哀しいのでしょうか。
・進級を前にして、宿題や課題、または目標などが達成出来ていないから?
・進級後、また新しいクラスに馴染めるか不安だから?
・もしトモちゃんと離れ離れになったら寂しいから?
・二年生から始まる授業や部活動の内容が難しかったり辛いから?
進級というターニングポイントで様々な不安に駆られるヒロコ。
しかし現在の書き方では、何に対して不安で哀しい感情を持っているのか分かりません。
続いてトモちゃんは、どうして気楽なままなのでしょうか。
・ヒロコなら何が起きても馴染めると信頼しているから?
・ヒロコに対して特別興味がないから?
・眠かったり他の事をしていたりで、話半分にしか聞いていなかったから?
・トモちゃんはもともと焦ったり慌てるような性格ではないから?
何が大丈夫なのか、現在の書き方では上手く伝わっておりませんね。
心配ないとはヒロコの事を思ってなのか、それとも何とも思っていないのかも、心理描写の描き方によって変わってきます。
以上の事を踏まえて、もう一度二人の哀しみと気楽さを描いてみましょう。
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とある一軒家の一室にて。
「トモちゃん~~~!! 来週から二年生なんだよ? 私はどうしたらいいの……」
涙声を上げながら、女の子は哀しみに明け暮れていた。
まだ進級をした訳でもないのに動揺したように口をパクパクとさせて、一人勝手に人見知りを発揮していた。
「大丈夫だってヒロコ。心配する事なんか別にないじゃない」
トモちゃんと呼ばれた女の子は、ヒロコとは対照的に気楽な態度でいた。
彼女は知っていたのだ。ヒロコは本人が思っているほど不器用な女の子ではないと。
スマホを弄りながら適当な様子で返事をしたトモちゃんは、自分がここにいる理由を早く彼女にも気づいて欲しいと思っていた。
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どうでしょう。
少し心理描写を書き足すだけで、ヒロコの哀しさは人見知りを発揮してしまうという不安からである事が明確に伝わるようになりました。
そしてトモちゃんもまた、一見適当な態度でスマホを弄っていますが、その心の内ではヒロコの事を信頼しており、既に自室へ友達を呼べるほど彼女はしっかりしている事を知っている。それ故に心配が要らないため、気楽な返事をしていたという事が分かりました。
何気ない一挙手一投足でも、そこには必ず何かしらの感情があっての行動だという事が伝わりましたでしょうか。
そしてその感情を描く事で、同じシーンでも何倍も感情の伝わる書き方となり、キャラクターの魅力がグンと上がる仕上がりになると思います。
直接クラス替えが怖いとかあなたはしっかりしているから大丈夫と台詞で言わなくとも、自然と溢れる感情を描く事で心理描写を書く事は出来るのです。
何故そのキャラクターはその感情に至ったのか。
その経緯を考える事で心理を明確化し、そっと添える様に描く事で、物語に奥行きを生む心理描写が描けるようになると思います。
以上が夜葉流心理描写の書き方でした。
上手くまとめる事が出来たか些か不安ではありますが、本エッセイで書いたような心理描写を駆使して物語をより濃密に描いてみてはいかがでしょうか。
きっと、今まで以上に魅力的なキャラクターやストーリーが出来上がると思います。
それでは、また次回のお題でお会いしましょう。
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