第15話 発見
包囲網は確実に狭まっていた。
聖地アハトの聖職者たちは
ラケシスも
そのため、捜索に投入されている神殿騎士や
とは言え、陽が沈む頃にはラケシスがいると思しき範囲はかなり絞られていた。
テルルは更にラケシスの
セレンはただテルルに着いて行くことしかできない。
無力で情けない自分に少し自虐的な思いを抱きつつも、セレンは気持ちを切り替える。少しでもテルルから何かを吸収して今後につなげようと思ったのだ。
「
「こ、これは
微笑みながら言うテルルの言葉に、セレンは自分も早く習得できるようになりたいものだと強く思った。
セレンが
クロムとの修行は、
セレンは目の前の
いくら教わっていないとは言え、現在のように全く役に立っていない状況を自覚するとセレンは悔しくなる。
今回のことには大事な友人が絡んでいるので尚更であった。
テルルはセレンの心の
「そうそう。そ、そのようなスキルや
セレンはテルルに導かれて、とある家屋にたどり着いていた。
周囲の家と似たり寄ったりで目立った特徴はない。
壁の上部に採光用のガラス窓がある程度で、他の窓であろう場所にははめ込み式の板が取り付けられている。
ガラス窓からは微かな光が漏れていることから中に誰かがいるのは間違いなさそうだ。
「お、恐らくこの家ね。後は増援を待つしかないかしら……」
テルルの中では確定のようだが、中に何人いるかも分からない状況では、2人で突入してもラケシスを助けられるとは思えない。普通に戦えば大人が数人いたところで勝てる自信がセレンにはあったのだが、人質がいるとなると話は別だ。
しばらく家の周囲の状況を確認していると、暗い路地から誰かがやってくるのがボンヤリと見えた。細かい砂利のようなものを平らに
テルルによれば、この場所は南門から近い住宅地であるらしく、この周辺は古くからの街並みが美しい住宅地であると言う。
そんな住宅地の一角でただ突っ立っていると言うのも不自然である。
照明が設置されているのは大きな通りや繁華街、神殿などの周辺だけで、住宅地付近は夜になると暗闇に支配されると言う。
セレンとテルルは住民の振りをしてすれ違うことにして静かに歩き始める。
ぼんやりとした薄暗い闇が降りようとしている
「!? もしや、テルル様ではありませんか? 貴方様もラケシスの捜索に?」
突如として掛けられた声にセレンはビクリと体を震わせた。
テルルはその声で誰か理解したのか、すぐに返事をする。
「あらあら、ヴァールさん? 貴方も?」
「テルル様、身内の問題にお力添え頂き有り難く存じます」
「む、息子の大切な人ですから当然ですわ」
お互いに顔見知りのようでしばらく話し合った結果、意見の一致を見たようだ。
中にラケシスがいるのは間違いないだろうが、状況が分からないため、警備隊を招集して一斉に突入する流れとなった。
1人が警備隊の詰め所へ向かい、残ったテルルとヴァールの2人は確実にラケシスを救出するために話し合いを続ける。
セレンはただただ2人の話に耳を傾けていた。
「あの家の中には恐らく6名います。ラ、ラケシスさんを除けば敵は5名ですわ」
セレンはテルルが誘拐犯の人数まで把握していたことに驚いた。
「ラケシスが人質に取られた場合、厄介ですね。一気に突入して制圧したいところです」
通信手段がないので他の捜索者と連携は取れていない。
そのため、クロムの姿は見えない。
通信手段となり得るスキルも存在するらしいのだが、ない物ねだりをしていてもしょうがない。
クロムもきっと近くにはいるのだろうが、もしかしたら遠くの
「ク、クロム様がいれば良かったのですが……。でも問題ありませんわ。ラ、ラケシスさんには傷一つ負わせません」
「
「ええ」
テルルの力強い肯定に、セレンは誇らしく思った。
それはセレンが見出した希望の光であったのかも知れない。
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