第6話

「ねえ、実果。わたし実果のことが好きなの」


窓ガラスから、澄んだ夕焼けの差し込む放課後、教室で2人だけになったときに思わず伝えてしまった。


いつの間にか大きくなってしまった感情を、心の中だけにとどめておくことができなくなっていた。


「わたしも紗良ちゃんのこと好きだよ!」


楽しそうに返してくれる実果が“好き”の意味を勘違いしていることくらいは紗良にはすぐにわかった。


いっそこのまますれ違わせたままのほうが良かったのかもしれない。この告白を無しにした方が良かったのだろうと後から思ったけど、紗良は続けてしまった。


「そういう意味じゃなくて、わたしは実果のこと、愛しているの。恋愛対象として好きなの……」


実果の小さな手を紗良がぎゅっと両手で包み込み、しっかりと目を見ながら伝えると、実果がとても困ったような顔をしていた。


マズイと思ったけど、すでに伝えてしまった以上、もう後には引けなくなってしまっていた。


「え……。その今は困るかも。あ、でも、その……」


できるだけ傷つけないように断る実果の優しさが辛い。それならいっそ一言でフってくれればいいのにと思いながら、紗良は大きな声を出す。


「もういい! 嘘。やっぱり嘘! なんでもないから!」


紗良は恥ずかしさで涙目になりながら、必死に実果の優しさをかき消す。


「あ、そうじゃなく――」


「いいから!!! もうその話はいますぐやめて!!!!!」


自分から言い出したのに無理やりに話を終わらせてしまい、自分の身勝手さが嫌になってしまう。実果は明らかに何かを言いたそうだったけど、その続きは言わせなかった。


これ以上断る理由を聞かされても、ただ胸が痛くなるだけであることは容易に想像できた。


しゅんとして静かになった実果を見ながら、突然こんなめちゃくちゃな告白をして、明日からどんな顔して会ったら良いのだろうかと紗良は悩んだ。


だけど、そんな悩みは杞憂に終わった。


次の日、学校に来た時に実果は何事もなかったかのように紗良と接してくれた。


さらに、それだけではなく、その数日後にクリスマスパーティーの誘いまでしてきてくれたのだ。


告白を断った相手と一緒にクリスマスを過ごそうとする方もするほうだし、断られたのに快諾してしまう方もしてしまう方だと思ったけれど、きっと実果なりに、これからも仲の良い友達としてずっと今まで通りでいようね、という決意の表れだったのだろうと思い、できるだけ紗良は普通に接しようと思っていたのに、それなのに……。

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