第4話
ツッコミどころ満載だったのに、とても満足感のある食事を終えて、紗良は持ってきたクリスマスプレゼントを実果に渡す。
「これ、あげる……」
顔を横に逸らしながら紗良が実果に綺麗な包みの箱を両手で渡す。
わざわざ先週の日曜日に車で1時間かけて親に札幌まで連れて行ってもらって選んだのだから、絶対に気に入ってくれると信じつつも、やっぱり普段の実果には合わなさそうなものだったから、喜んでくれるか心配でもあった。
「わあ! なにこれ! 開けて良い?」
楽しそうに聞いてくる実果の声にゆっくりと頷いた。実果がワクワクしながら箱を開けていくと、中からは大きなリボンのついたバレッタが出てくる。
「わあ、なにこれ? このリボン何に使うの? プレゼントを結ぶときとかにも使えるの?」
「いや、リボンのついたバレッタなんだから、髪の毛を結ぶのに使わないと……」
「なるほどね。さすが、紗良ちゃん! すっごくちょうどいいよ!」
ちょうどバレッタを欲しがっていたということなのだろうか。いずれにしても実果は嬉しそうな表情をしているので、とりあえず一安心である。
「実果、ちょっとあっち向いて」
「え? なんで?」
「いいから」
実果に背中を向けさせる。紗良が実果の髪の毛を触り、ゆっくりとバレッタをつけた。
「可愛い……」
紗良は思わず呟いてしまい、慌てて両手で口を押える。とはいえ一度声にだしたことは戻ってくれないので、今の呟きははっきりと実果の耳に入ってしまっただろう。
実果は普段髪飾りはもちろん、髪の毛の手入れもろくにしていなさそうな子だけど、アクセントがあれば絶対にもっと可愛くなると信じていた。少女のように純真無垢な、可愛らしい実果の顔がリボンの効果でさらに可愛らしくなった。
「可愛いの? わたし紗良ちゃんのおかげで可愛くなったの? ヤッター!」
元々可愛いから、そう心の中で呟いたけど、恥ずかしいから今度は絶対に口には出さなかった。そんなことを考えていると突然実果が抱き着いてきた。
「紗良ちゃん、ありがとう!」
「ちょっと、いきなりやめてよ!」
突然の行為に慌てたというのもあるけれど、一体どういうつもりで今の関係性の紗良に実果は抱き着けるのだろうかと少しムッとしたのもあって、語気は強くなった。
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