第3話
「まあ、ジュースは美味しかったけど、お皿の上に山盛りにのっているこれは……?」
「見たらわかるでしょ? ジャガイモだよ!」
「そうよね……」
お皿の上に山盛りのポテトが乗っている。これがフライドポテトとかならクリスマスパーティーにはちょうど良い料理なのかもしれない。
だけど、今目の前にあるのは皮だけ剥いてふかしたジャガイモにバターが塗ってあるもの、いわゆるじゃがバターである。
たしかにじゃがバターは美味しいけれど、女子高生2人でするクリスマスパーティーに用意する料理ではないのではないだろうか、と疑問に思う。
「どういうつもり? やっぱりふざけてるんじゃないの?」
「やだなあ、紗良ちゃん。ふざけてないよ。わたしは紗良ちゃんに一番美味しい物を食べて欲しくて選んだんだから! うちの畑で取れたジャガイモで作ったじゃがバター、絶対紗良ちゃんも気に入ってくれると思うんだ!」
「そりゃ、じゃがバターは美味しいけど……」
いろいろと思うところはあるけれど、考えるより先に、実果が一口サイズにしたジャガイモをフォークに刺して紗良の口まで運んでくる。
まだ湯気がたっぷり出ているジャガイモとバターの風味が鼻孔をくすぐる。
「ちょっと、自分で食べられるから!」
口ではそう言っているのに、紗良はついつい大きな口を開けて実果を待ってしまっていた。
まったくプライドというものをどこに置いてきてしまったのだろうかと、内心で自分に呆れながらも、複雑な気持ちで実果に甘えて、ジャガイモを食べさせてもらった。
「あっつ!!」
紗良は反射的に大きな声を出した。ふかしたてのジャガイモはとても熱い。手で口を隠しながら、ほんの少し口を開いて口内のジャガイモを冷ます。
「どう? 美味しいでしょ?」
またもや自信満々な表情をする実果の目をみながら、紗良は熱さで目に涙を浮かべて、うん、と頷く。
口の中でほろりと崩れるじゃがいもに味の染み込んだバターがとても美味しかった。この味を実果が食べさせてくれようとしたのなら、やっぱり嬉しい。
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