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 何とか依頼を達成し、ダンジョンを脱出した俺は、いつの間にか眠っていたエリオットを抱えたまま冒険者ギルドへと戻った。救助隊が編成される前に戻れたのは幸いだったと言えるだろう。受付嬢のミッシェルに事の次第を連絡するとともに、賞金の受け取りを済ませる。後、俺に残された仕事はエリオットが目覚めるのを待つことだけだ。

 当の本人は呑気そうにギルドの長いすで横たわっている。そろそろ夜も近い、ということもあってギルドの喧騒は増しているというのに、よくもまぁ、こんなに気持ちよさそうに眠れるものだ。

 傍らに腰かけながら感心していると、エリオットがもぞもぞと動いた後、薄目を開けた。忙しそうに動かしている瞳の中に俺が映り込む。そこで自分の状況を思い出したのか、勢いよく起き上がった。覗き込んでいた俺の額とエリオットの額がぶつかる。


「痛っ!!」

「いたぁ……。」


 しばらく見つめ合った後、二人して額を押さえているのが可笑しくて笑う。お互い気になる事はあるけれど、今は無事を喜んでいたい。二人の意見は一致していた。


「よし、今日の夕飯は豪勢にいこう。」

「ふふっ、はい。依頼達成記念ですね。」


 夜は更けてなお、冒険者ギルドには明かりが灯り、朝になるまで楽し気な声が漏れ出していた。

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ヴァンパイアハンターは吸血鬼の夢を見ない 紅りんご @Kagamin0707

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