10
「これで一件落着ですね。」
「いいや。まだだな。」
「え、まだ何かあるんですか?」
「こんな空間は本来あり得ない。なんせ、このダンジョンは二階層までしかないからな。それはこの空間のどこにも通路がない時点で分かる。つまり、この空間は誰かが意図的に作ったことになる。」
「だから、何なんです?一々回りくどい言い方しないでください。」
「あんなデカブツがいた時点でここが善意で造られた空間な訳がない。となると、造った奴は万が一、ここが見つかった時の対策もしてる筈だ。」
天井の隠匿魔法は消え、二階層の天井が見えている。天井からの落石が僅かになった代わりに、今度は四方を囲む壁に大きな亀裂が入り始めている。それに続いて足元が覚束なくなるほどの揺れ。アランが言わんとしていることに何となく見当がついた。
「……破壊工作。」
「そうだな。恐らく、この魔法陣を基盤として展開されてた空間だったんだろうな。それを壊した俺達はもうすぐ生き埋めルートに突入する。」
「なに悠長なこと言ってるんですか!?そうと決まれば早く逃げますよ。」
「ん、あぁ。俺は死なないから別に急がなくていいか、って思ってたんだがお前は死ぬのか。」
「そういう冗談は後にしてください!!さ、頼みますよ。
「おう、任された。」
アランの全身に再び赤い幾何学模様が刻まれる。それを確認した後、アランはエリオットを抱きかかえ、地を蹴る。落ちてくる土塊を足場に、俊敏に二階層まで駆け上がった。
二階層に辿り着いてなお、アランはエリオットを降ろすことなくダンジョンの出口へ向かって駆けていた。
「も、もう降ろしても大丈夫ですよ。」
「一度止まったら、筋肉痛で動けなくなる気がそれでもいいか?」
「そ、それならこのままお願いします。うーん、身体強化魔法を掛け過ぎちゃいましたかね?」
「いや、俺の運動不足のせいだ。気にするな。」
「それ、キメ顔で言うことなんですか。」
「うるさい。ほら、しっかり捕まってろよ。」
ドラゴンが消えたせいだろうか、ダンジョン内部にモンスターが姿を現し始めていた。アランはそれを加速しつつ、巧みに避ける。
真剣なアランを眺めながら、エリオットは思考を巡らせる。この男はヴァンパイアだという。それなのにヴァンパイアハンターを名乗っていた私をわざわざ助けに来てくれた。それは何故なのだろう。
そんなことを考えている内に、エリオットの意識は遠のいていった。
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