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1人でもクエスト攻略は出来る、はず。心の中で反芻し、ぐっと強く杖を握る。
ゆっくりと踏んだ階段が乾いた音を立てる。一気に駆け下りたい気もするが、地下すぐにアンデッドがいた場合に対応ができない。それに、エリオットは夜目が効かない。暗視系の魔法を持っている訳でもない。
「じゃあ、何で来たのか、って話ですね。ははっ。」
自嘲気味に笑う。それをフォローしてくれるような誰かはここにはいない。さっきまでなら一人いた。それももう見込めないだろう。
一層目に降りるも、そこにアンデッドの姿はない。ただ、アンデッド特有の臭いが鼻をつく。この濃さ、恐らく地下二階にいるはず。
「ふぅ。」
荒くなっていた息を整える。気が付かない間に杖を握りしめていたらしい、手が赤く充血している。意を決して、地下二階への階段を下り始める。
自分の実力に自信がないわけではない。あの男が言っていたように、その全てをヴァンパイアのための魔法に費やしていることを除けば、自分が常人の域に無いのではないか、なんて見当はついている。
ヴァンパイア専門に術式を改変こそしているものの、普通のモンスターに対して効果がない、というわけではない。特定の対象向けに改変することで、それ以外に対する威力が落ちてしまうのだ。つまり、多様なモンスターを相手取る上で非効率極まりない。そんなこと言われなくても自分が一番よく分かっている。
「でもっ……私は普通のプリーストになりたいわけじゃ、ない。」
何度も繰り返してきた言葉。噛み締めた歯が当たり、唇の端が血に濡れる。
階段が終盤に差し掛かろうか、という所でエリオットは詠唱を開始する。その両手に杖を握りしめて。
「赤より冷たく、青より熱く。」
エリオットの声に応えるように杖の先端、金色の繊維が入った球が光を帯び始める。
「白より鋭く、黒より輝け。」
魔力感知に引っかかったアンデッドの数、およそ30。この程度なら一掃はたやすい。杖を構えたまま、階段の影から跳び出し、二階層に群がるアンデットへ向けて叫ぶ。
「これなる瞬きは、汝の真名をも貫かん――
杖から飛び出した細く鋭い光の槍が骸骨系のアンデッドたちを巻き込み、次々に爆発を起こす。刹那、辺りは暴力的な光に包まれた。
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