4
冒険者。地位、名誉、大金、戦闘等々、「何か」を夢見、追い求める者たちが辿りつく場所の一つ。冒険者になる者が多い状況には「身分を証明する必要がない」という点が関係している。生まれた身分やそれまで何をしていたのかが問われることはない。必要なのは、戦えるだけの能力。そして、もう一つ。
残念ながら、その一つの条件をアランは満たすことができない。故にアランは冒険者の登録をすることなく、ミッシェルをなだめすかして何とか依頼を受けさせてもらっている。パーティーを組んだ今なら、代表者が冒険者であればアランが冒険者である必要はないので、アランにとって都合がいいのも事実だった。
「はっ、はっ、はっ、はぁっ!!」
目的のダンジョンは街外れの森の中にポツンと存在していた。このダンジョンは全二階層。いかにも初心者向け、といった感じのダンジョンだ。
世界各地にダンジョンはあるが、その多くは攻略済みだ。ここのダンジョンもその例に漏れない。例外的に新たな階層への道を発見することもあるが、攻略済みのダンジョンではもっぱら素材の回収のみが行われる。そんな場所での突然のアンデッドの大量発生。アンデッドは人の負の感情が集まる場所に発生しやすい。確かに歴史あるダンジョンには多少なりとも人の怨念はたまるし、アンデッドも出る。だが、大量発生することはあり得ない。アンデッドは繁殖で増えるモンスターではないからだ。何者かによる召喚、何か作為的なものを感じずにはいられない。だから余計に嫌な予感がする。
ダンジョンの入り口に差し掛かる。朽ち果て、蔦の巻き付いた階段を駆け下りる。
「っ……!!これは。」
地下からの振動で思わずバランスを崩す。揺れの大きさからして地下二階の辺りだろう。地下一階から二階へ連なる階段――魔法が行使されたことによる衝撃か、所々が大きく崩落している――をつま先で飛び跳ね、降りていく。
最後の一段、そこから地下二階が広がっているはずだった、が。そこには深い穴が広がっているだけだった。
「崩落してるのか。あいつ、どんな魔法を使ったんだ。」
穴を覗き込むが、その底は見えない。そして漂ってくる死の匂い。見えないのに、臭いだけは香ってくるのは、恐らく隠匿系の魔法が使われているのが原因だろう。実際の深さはそれほどでもないはずだ。アランは、何者かの関与への確信と共に穴へと飛び込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます