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ボロ屋からゆらりと出て、歩き、早足で、やがて駆ける。勢い良く開けたギルドの扉、その先へと飛び込んだ。必死の形相にでもなってしまっているのだろうか、ギルドでたむろする面々がどうかしたのか、という表情でこちらを見てくる。残念ながらそこにエリオットは見当たらない。他の場所を当たろうとギルドを去ろうとしたアランの側に人が立つ。それは、受付嬢ミッシェルだった。
「あー、ミッシェルさん何かご用で?」
「たった今、エリオットさんのことでご連絡を入れようと思っていた所なんですよ。」
「詳しく。」
「少し前、受付にエリオットさんが来られて、この依頼を受けるとおっしゃったんです。」
そう言って、アランに一枚の依頼書を見せるミッシェル。そこには『ダンジョンで大量発生したアンデッドの掃討』とある。
「これを、受けると。」
「これはパーティー専用の依頼でしたので、単独では受けられないことをお伝えしました。ですが、『話は通してあるから大丈夫。』と言って飛び出して行かれて。そこで、エリオットさんのパーティーメンバーのアランさんがこのことを知っているのか、と呼び出そうと思ったんです。……案の定、知らなかったみたいですね。」
「はぁ。賞金は3万エスタ、か。」
王都への駄賃にするつもりなのだろう。あるいはヴァンパイア特攻の魔法しか使わないとしてもクエストをクリアできると証明するためか。何にせよ、あいつが危ない橋を渡ろうとしているのは間違いない。
「どうされますか?こちらで救助隊を呼ぶこともできますが。」
「いいや、いいです。あいつ一人連れ帰るのに、そんな大勢要らないから。俺一人で行ってきますよ。」
「……1時間で戻ってこられなかった場合は、救助隊を編成して派遣します。」
「助かります。」
軽く息を吐き、依頼書片手にギルドを出ようとしたアランの背に声がかかる。
「無事に帰ってきたらアランさん、冒険者登録の方、今日こそ済ませてくださいね。」
「はいはい、分かってますよ。それじゃ。」
了承したとは思えない、ひらひらと振られた右手。それを最後にアランは今度こそ冒険者ギルドを飛び出した。
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