003「見えない何か」

私の視界には、生まれつき何かが見える。


何かは分からない。 それが生きているのか

死んでいるのかでさえも。


私はその子に話しかけた。


「ねぇ、君。」


「なぁに? おねぇさん。」


その子は目をこちらに向けて返事をした。


「君はどこから来たの?」


私はその子に素朴な疑問を投げかけた。


「わからない……おねぇさんは?」


「私にも分からないの。」


そう、私は生まれつき孤児だった。

だからそばに居てくれるこの子が何よりの

家族だった。


「おねぇさんはひとりじゃないよ。」


「そうね。 君もひとりじゃないよ。」


私にはこの子しかいない。


「あっち。」


「あっち?」


その子は何も無い方を指さした。

その先には花畑があった。


「おねぇさんがいくところ。」


「そうね。 そろそろかもね。」


私が花畑へ足を踏み入れたその瞬間、

私は意識を失った。

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