夢から覚めて、魔法は解けて

「えっ…………ほんとに寝ちゃってた??」

 

 なんの脈絡もない衝動から体を起こすと、時計は二十四時をとっくに回っていた。


 クリスマスイブは終わりを告げ、私の酔いという魔法も溶けていた。

 

 どうやら私はあっくんの膝の上で寝ていたらしく、当の本人は机に突っ伏せて気持ちよさそうに寝ていた。


 普段は寝たふりで済ませているのが、本当に寝てしまっていたようだ。

 

 私は机で伏せるあっくんの寝顔を見ながら、今日のことを思い返す。

 

「酔わないお酒を必死に流し込んでも、一歩を踏み出す勇気はくれないか……」

 

 私は飲みっぱなし、散らかったままの机の上からいくつか缶を探ると、一本を手にとる。その缶には、『これはお酒です』とはっきり書かれていた。

 

「お酒が混じっているのはびっくりしたなぁ……さすがにやばかった……」


 何度も思いが溢れそうなのを抑えるのに必死だった。

 

 私はお酒に弱くて、酔ってしまうと何を言い出すかわからないから、飲まないようにしている。


 でも、あっくんが間違えて混ぜてしまっていたらしい。

 

「でも、酔った勢いでそのまま思いを伝えられていたら、楽だったのかな…………」


 私は首を振った。もしそれで今の関係が崩れるなら、もう私は生きていけない……。

 

「こんなの、もう笑い飛ばすしかないよね……」

 

 私はカバンから赤と緑でラッピングされた包みを取り出すと、そっとテープを剥がす。

 そして、横に長い冊子一つとカードを入れて、包みを元に戻す。

 

「これ返ってこなかったら、明日からの生活どうしようかな……」


 私は少し苦笑いをした。たぶん、苦笑いじゃ済まされないような事態なんだろうけど、私は少し笑っていた。

 

 でも、返ってこなかったとしても、全然いいような気がした。あっくんのためになるのであれば……。

 

 私はそっと玄関ドアを閉めて、外へ立つと夜空を見上げた。


 今日……いや、昨日はクリスマス・イブ。


 私はとても大切な時間を過ごすことができたけど、大切すぎて大切すぎるがゆえに、全てが偽りだらけ…………。

 

「私も欲しいな、プレゼント」

 

 私は寒空の下、ため息をつきながら彼の家から離れた。

 

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