ヤンデレの元カノに身バレしないかヒヤヒヤですのところ

第26話 高校どこいくか悩んだ

まえがき


ようやく本作のテーマであるヤンデレにストーカーされるところまで入っていきます。

毎日更新を追って下さっている多くの方々、誠にありがとうございます。


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『オソノイ』という亡霊がいた。


病院だろうが、どこにいようが既に消え去ったくじらの小部屋に住み着いて、動こうとしない。


彼女は今も、あの小部屋にいるのだろうか。


XXX


舞台が終わり、私は日々を愛弓さんと紅葉さんとの三人で過ごすようになって一年の時が過ぎた。


二人はなんと、我が母校(巣立ってないのだから母校とは呼べないかもしれないが)甘王寺高校の生徒となっていた。


前世では愛弓さんは確実に私の高校にはいなかったと思うのだが、紅葉さんが頑固に女子校に行くべきなのだと主張して、二人して在野さんの母校である甘王寺高校に入学したのだ。


愛弓さんが既に結構な有名人だから、共学を少し恐れたというのもあるが、ほとんどの理由は紅葉さんが愛弓さんに出会いがあることを嫌がったからだ。


束縛癖は、相変わらず治っていなかった。

その日も、私は愛弓さんと紅葉さんと馴染みのカフェに来ていた。


「それでさ、音ももちろん私達と一緒の高校来るよね?」

「…甘王寺高校、ですか」

楽しいよ。天国だね」

紅葉さんが言う。


そりゃあ、あんたにとっては天国だろうよ。紅葉さんと愛弓さんはそれぞれ違う賃貸に住んでいるのだが、紅葉さんが毎日絶え間なく家を改造し、愛弓さんが居着きたくなるようにしているらしい。


そのおかげか二人はほぼ同居状態にある。しかしこの前泊めてもらったらベッドは一つしかなくて、紅葉さんの嫌なところがとても出ていた。


まあそんなお泊り会もなんだかんだ楽しかったし、甘王寺高校に行ったら以前通ったときより楽しいんだろうなぁ。でもなぁ。引きこもってたしなぁ。


私が黙り込んでいると、迷っていると思ったようで二人で追い打ちをかけてくる。


「いやぁ。音がもっと進学校に進めるくらい頭がいいのは知ってるけどさ。もう進路迷わなくていいくらい稼いでんでしょ?」

「そうだよ。どうせ私達、まともな職業につかないんだから」


劇団員もVtuberも立派な仕事だよ!

まあ、進路のこと心配しているわけではない。勉強のことは心配ないが、進学校に行ってしたいこともないのだった。


「だからさ、私。高校に行かないでいいかなって思ってるんだよね」

「「えぇ!」」

二人は本気で驚いているようだった。でも、高校ってそんな大事かなぁ。


Vtuber辻凜花は、ぼちぼち上手くいっている。


まあ、昨今ようやく火が付き始めたVtuber人気にはいまいち乗り切れていないような気もするが、変なことをしている奴、という位置はずっとキープ出来ていた。


皆が知っているメンツの幻の6人目、みたいな位置にはいる、と思う。


大人気!というほどにはなっていないものの、コツコツと登録者も増えており、今はまだ世間がYoutuberを職業にすることに対して懐疑的ではあるものの、未来を知っている私からすれば、このまま続けていれば生涯食うには困らないかな~と思っている。


今の私は、引きこもりのファンだった時には既に引退していたVtuber達を楽しむことに専心しており、耐えきれずにコラボしたり、未来に大人気となるVtuberの娘達に青田買いチックに仲良くしたり、割と好き放題している。


そんな楽隠居中の私は、義務教育以上に進む必要性を感じていなかった。


「そんなのさ。親が許すわけ?」

紅葉さんが言う。


彼女は、前の時間軸では高校生になっていた頃には韓流の男性アイドルみたいなファッションと髪型をしていたはずだが、今の彼女は中学の頃の刺々しいファッションを貫いており、メジャーに行ったパンクロッカーのようなファッションをしていた。


大事なのは、メジャーデビューしているパンクロッカーってところね。彼女は、何故か昔からどこか気品があった。


「うん。許してくれると思う…けど」


私の両親は病気のことも知っているからな。余命があることも。

確かに、まだ愛弓さんにも紅葉さんにも病気のことを話してはいないのだから、不審に思っても無理はないだろう。


「そりゃ、ま。えらく先進的なご両親だね」

「でもさ、楽しいよ~。そんなさ、稼ぐだけ稼いで高校通わないなんて本末転倒だってば!なよぅ。いくら稼いだって買えないんだよ!青春は!」

「別に私は高校に行かずに配信ばっかするわけじゃないよ」


そういう愛弓さんも例に漏れず変わっていた。彼女はグラビアの道に進む代わりに、劇団員をしつつもSNSを有効活用し、インフルエンサー?のような活動をしていた。


今の日本じゃまだフォロワー数が多くともお仕事なんかはそんなに貰えないだろうけど、彼女ならいずれ若者の代表に成りおおせるだろう。


私がいつかお金持ちになれるよ!と褒めると「辻凜花のSNSを参考しただけだよ~」なんて言うが、彼女はとっくに私よりフォロワーが多いのだった。


少し嫌なところがあるとすれば、二人ともとんでもないレベルの美人な癖して、私のことを積極的にインスタに投稿するところだ。


愛弓さんのインスタにも時おり私をおこぼれで褒めるコメントが届いており、少々恥ずかしい。


「本当に二人のことも大好きなんだけどさ。高校行ってなくてもこうして会えてるんだから」

「逆だってば!高校にいけばもーっと長い時間会えるんだって」

「あれだよ?音が思ってるほど高校って厳しくないよ?中学と変わんないって」


一年も傍にいるうちに、紅葉さんも私に対して甘くなった。昔は愛弓さん以外目にも入れたくないって感じだったのに。


「とにかく、絶対甘王寺に来ること!分かった?」

と、最後には愛弓さんに強引にまとめられてしまった。


私の中学最後の冬は、こんな感じのまぁまぁ満ち足りた日々だった。


XXX


家に帰った私は、高校に行きたくないという旨を相談するため、両親を呼びつけていた。


だって未来で引きこもりだったんだもん。

「母さん、父さん。私、高校行きたくない」

「父さんは、お前がそれでいいならいいよ」

「私は、反対。行けばいいじゃない」


ありがとうお父さん。


「どうして、反対なの」

「家でずーっと何するの?面白くないよ。鬱陶しいし」

ひどいな。


「今だって、十分楽しいよ。配信だって、そりゃあ、お母さんには何が楽しいのかも分からないかも知れないけどさ。すごい楽しいんだよ」


これは、本当。今の私は十分楽しい日々を過ごしている。


「いいえ、絶対に高校に行けば貴方の人生はもっと楽しくなる。行かなきゃ、後悔すると思う」

引きこもっていた時に、似たようなことをよく言われていたことを思い出す。


私はもう高校は経験してるんだぞ!


「確かにさ、お母さんの高校は楽しかったかもしれないけどさ。そんなの私もそうかなんてわかんないじゃん」

「そうね。音の高校生活が楽しくなるかなんてわからないけど、絶対行かなきゃ死ぬ前に後悔することは分かってる」


「だからなんでなの?」

「そりゃあ、音。あなた、ほんとに恋しないまま死ぬつもりなの?」


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あとがき


Live2Dってサービス名だったんですね。手法の名前かと思ってました。

一応、作中では出さないようにしています。Twitterとかは、出してるんですけど。

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