第2話 推しカプが尊い
私は
……これは一体なんの奇跡だというのだろう。
わけがわからない。思考が追いついてこない。
確かに覚えているのは、何度も繰り返しプレイしたこのゲームをまたやろうと思ったとき、見慣れない表示があったことだけ。
そうか、もしかしたら、あれがきっかけだったのだろうか。プレイ画面の前に出てきた、よくわからない選択肢。
そうだとしたら納得はいく。あんなに胡散臭い転生モノによくありがちなあれが引き金になっているだなんて思いもしなかったけれど、それでもまだ理解はできる。
ぐるぐると回る頭を落ち着かせるため、深呼吸をする。吸って吐いて、吸って、吐いて。ラジオ体操で何度も聞いたことがあるだろう。大きく吸って、吐く。うん、なんとなく落ち着いて来たような気がする。
そんなふうに思っていたら、美少女が二人、こちらを心配そうに見つめていた。
「真白ちゃん、ちょっと、大丈夫……? ツイスターゲームは終わりにして別のことする?」
「反応鈍くて心配なんだけど。優依の言うとおり、今日は座ってできるやつとかさ」
気遣わしげな視線。根っからのいい子である優依ちゃんと、若干柄は悪いように見えるけれど根は優しい星羅ちゃん。二人が私を心配して見つめている。
……だめだ、ひたすらに嬉しい。
嬉しいけれど、ツイスターゲームが中断されるのは頂けない。だってこんなに尊い百合をどうしてやめさせなくてはいけないんだ。やめさせていいわけがない。
「だっ、大丈夫だよ!! 私めちゃくちゃ元気だからね? ちょっとぼーっとしてたっていうか、考え事してただけだから。それより早く続きやろうよ! 勝負つかないまま終わるのもなんか味気ないじゃない?」
そう言って説得をすると、どうにかわかってくれたらしい。
「マシロがそう言うなら」と、二人して体をもとの位置に戻す。
これだけで、なんというかもう、尊い。先程まで体に負荷がかかる体勢を維持していたということもあり、二人の額を汗が伝った。ぷるぷると震えている星羅の脚は白く滑らかで、熱っぽい優依の視線も扇情的だ。
もう、私は死んでもいい。
そう思いながら二人のことを見つめる。
こうして二人を堪能できる時間を大事にしようと、視線をゆっくりと動かしていく。まずは星羅ちゃんに覆いかぶさるような体勢の優依ちゃんから。
あぁ、ゲームとまるで同じ、整った綺麗なお顔が素晴らしい。肩くらいまでの艷やかな黒髪が星羅ちゃんの顔にかかりそうになっている。汗をかくくらい暑いのだろう。白い肌が若干赤らんでいる。そこに色っぽさを感じてしまう私はきっとおかしくないだろう。
キャラクター設定が頭の中を駆け巡る。あれだけやり込んだ甲斐があったというものだ。
優依ちゃんのことを思い出し切ると、ゲーム脳のわたしの頭は自然と星羅ちゃんの方に視線が移った。
そして彼女の方も、素晴らしくゲームそのままだ。ふわふわした金髪が白い肌によく合っている。ゲーム内人気投票で一位になるのも頷ける端正な顔と、人を惹き付けるカリスマ的な雰囲気。
こんなに綺麗な二人が重なりあっているという状況に興奮しないでいられるオタクがいたら教えてほしい。私が
今のふたりは、それこそ『ユイセラ』信者であれば爆発四散してもおかしくないくらいの構図になっていて、優依ちゃんが星羅ちゃんのことを押し倒しているような形だ。
星羅ちゃんは中々きつそうな体勢だ。顔を上に向けるようにして、手と足がそれぞれ左が赤、右が緑と、手足を開かざるを得ない体勢になっている。腹部がさらけ出された体勢はどうにもいやらしい。高校生ながら豊満な乳房が主張を強めており、一般的な女生徒よりも短めのスカートが彼女の太腿を露出させる。体幹はそれなりにしっかりしているものの、流石に体がきついのか足が時折震えるのが伺えた。
優依ちゃんはそんな星羅ちゃんに覆いかぶさるように、手は星羅ちゃんの体を挟む位置に。そして足は、片足は星羅ちゃんの間、もう片方は一番外側の緑において、お尻が上がる形になっている。細い腰と足が綺麗な形のお尻を支えており、上がった腰のせいで彼女のすべすべの太腿が見えそうで見えないくらいの位置でスカートが揺れている。
「はやくッ、マシロ…!? つぎ、まわしてよ、しんどいんだからぁ……」
「あっ、ごめん! どっちからだっけ」
「次、動くの私だよ? 大丈夫、真白ちゃん…?」
「ごめんごめん! ど忘れしちゃって……次はえーと、……優依ちゃんの左足が、エアーだから、浮かすだね」
「えっ、ほんと!? やば、きついなぁ……あ、ぅっ…!」
高く上がった腰から伸びるすらりとした白い足が、ゆっくりと宙に浮いていく。それに合わせてスカートの裾が次第に上にあがって、隠されていた太腿が少しずつ露出していく。
ひらひらと揺れるスカート。雪のように白い、というと大げさだがあながち間違っていないと思える美しい肌と、肉感のある柔らかそうな太ももが少しずつ姿を現す。
手に体重をかけているのだろう、肘が少し曲がって二人の距離が近づいた。
「ちょっと優依。ちかくない…?」
「ごめんね星羅。うぅ、きつくて、しばらく許して…? 左足さえつけれたら、戻るからっ!」
「わかったよ。……ちょっとマシロ、はやくつぎ!」
「……あっ、ごめん。次いくね」
見とれていた、なんて言えるわけがない。顔が近づいていたことに動揺していた星羅ちゃんも、体勢の辛さ故か大きな息を吐いた優依ちゃんの姿も、二人して”そういうコト”をする前の様子にしか見えなかったから。
煩悩を振り切るように次のルーレットを回す。指示は、右手を青に。そのままに読み上げると、苦い顔をした星羅ちゃん。
「よりにもよって手ってマジ、体重移動きつすぎ……」
そう、先程から彼女の体勢は上向き。両手両足が遠く離れている状態が故に手に体重を載せているから、右手を動かすのは中々にしんどいのだろう。
とはいえまだギリギリ体力が残っている星羅ちゃんは、ぐっと左手に力を入れて移動させ、見事に指示通りの位置にたどり着いたのだった。
「はぁ、きっつ。ってか……やっぱり顔ちかくない、優依?」
「うっ、今左足を浮かせてるせいで、どうしても右側に体重かかっちゃって……」
「じゃあしょうがないけど……」
恥ずかしそうに顔を逸した星羅ちゃん。優依ちゃんとの顔の近さに照れた素振りをしているのがもう生ユイセラ過ぎて――
「……わたし、もうしんでもいい……」
二人には聞こえないくらいの小声で、そっと呟いた。
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