手放し

シヨゥ

第1話

「いらないなら捨てちゃいなよ」

 そんなことを言われた。

「使わないものを取っておいたら身動きが取れなくなるよ」

「でももったいないし……」

「もったいないと思う気持ちは大事だけどさ。大切に持っているだけじゃどんどん劣化しちゃうよ。そうしたら最後は捨てることになるんだよ」

「そうだけどさ……」

 思い入れも強いだけになかなか捨てられない。

「それが重りになっても?」

「重り?」

「持っていることを理由にしちゃうんだよ。もう持ってるからって新しい一歩が踏み出せなくなる。そんな今にしがみつく生き方でいいの?」

「それは……嫌だな」

「じゃあ捨てなきゃ。それを買ったこともいい思い出にしてさ」

 その言葉とともに肩を叩かれた。その瞬間手から何かが離れていく感じがした。

「大丈夫。必要ならまた掴めばいいんだから」

 その言葉が心を軽くする。しがみつかないでいよう。そう思えるようになった気がした。

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手放し シヨゥ @Shiyoxu

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