神様専属? 何でも屋になりました

@yukireokouhibi96

第1話 自分の出来る事は?

(あぁ、今日も沢山のダメ出しだったなぁ。)

転職してからというもの毎日毎日嫌という程のダメ出しの連続ですっかり自信を失くしてしまっていた俺は、いつもならスルーする帰り道の星宮神社についつい足を伸ばしてしまった。正直、神様や仏様なんて全く信じていない。ただ、本当に何となくだった。それが、俺の人生を変える事になるとは思わずに………………


『流れが掴めてない。まずはしっかり掴んで 

 次はもっとちゃんとしないと

 ちゃんと見てる?やり方違うんだけど

 全然できてないじゃない

 何してるのよ。これこの間教えたでしょ?早く          

 覚えて。』

毎日毎日繰り返される言葉。出来ない俺が悪いのは分かる。でも、言い訳させてくれ。

まだ、入って1ヶ月経ってないんだ。

全て出来たら人間じゃない。覚える事がありすぎて、次から次で実践練習もあって。いっぱいいっぱいなんだよ。そんな事を心で思いながらも何とか仕事をしていた。心が悲鳴をあげはじめているとも感じずに。

いつもの様にダメ出しをされての帰り道、いつもは気にならない鳥居に妙に惹かれた

「ちょっと、寄ってみようかな」

独り言を言いながら引き寄せられる様に神社に足を踏み入れた。近所の小さい神社だがお社は意外と立派だった。お賽銭をして、特に願い事はせず

2礼2拍手1礼した。だって、信じてないし。

気の迷いだと思わず苦笑する。俺は何をしているんだろうかと思いながら、帰ろうと階段に足を出した瞬間、何故かバランスを崩してそのまま下に転げ落ち意識を失った。

「……ここは?」

目が覚めると、布団に寝かされていた。

(ここは、どこなのだろう?)

と思い、周りをゆっくり見回す。しかし、見たことのない場所だった。寝ながらキョロキョロしていると、頭の後ろから声が聞こえた。

「あぁ、よかった。目が覚めましたか?」

声のした方に目線を向け、声の主を確かめようと身体を起こそうとした瞬間激痛が走った

「いっっってぇ」思わず絶叫してしまう。

「あぁ、あなた神社の階段から転げ落ちたんですよ。全身打撲、左足に至っては骨折してます。」

「えっ?骨折?まじで?」

(どうりで痛いはずだ。でも、しっかり処置が施してある。助けてくれたのか。あぁ、お礼を言わないと)

そう考え、声のした方に顔を向け絶句した。

なぜなら、二足歩行の犬だったから。

「大丈夫ですか?何か食べられますか?」

「……………………」

「さっきから固まってますが、どうかしましたか?」

犬は普通に喋ってくる。

(俺は夢を見ているのか?)

半信半疑で、思わず頬をつねる。

(痛い。夢ではない。いや冷静になれ。俺)

そんな事を思っていると犬がまた喋りかけてくる

「あの?本当に大丈夫ですか?」

俺は我に返り慌てて喋った。

「あぁ、すいません。えっ…と助けてくれてありがとうございました。それで……あの……何…で…犬が……その……あの……喋れ…るんで…しょうか?」

しどろもどろになりながらようやく俺は言いたい事を言った。すると、犬は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に戻り喋り出した。

「あなたには私が犬に見えるんですか?、すいません。驚かせてしまいましたね。私は、ここの神社の狛犬なんです。普段は、もちろん人様の前には現れないんですが、あなたが、階段から落ちたものですから慌てて対処致しました。」

「えっ?あっいやどっからどう見ても犬ですよね?」

と俺は一言伝えたが頭はパニックだ。

(いやいや、狛犬ってまじかよ。いや、でも、犬が喋ってるし!現実だよな。でも、まてよ。俺これからどうなるんだ?)

そんな事を考えていると、狛犬が、見透かした様に笑顔で話掛けてくる

「そうですか。あなたには……みえる……おもしろいですね」

ボソッと狛犬は呟いた。

そして、話始めた

「あなたには、ケガが治るまでこちらにいて頂きます。あぁ、拒否権はありません。私の姿も見てしまった事ですし。そもそも、その身体では、1人暮らしは無理ですしね。そのケガでは仕事も暫くはお休みになりますよね。それとも辞められますか?まぁ色々大分お疲れの様ですから、この機会にゆっくり休んで下さい。自分探し?してみても良いのではないかと。もちろんその間のお世話はしますのでご安心下さい。何か質問はありますか?」

「いや、ありがとうございます。正直助かります。でも、本当に良いんですか?あなたには負担をかけてしまいますけど。」

「私は大丈夫ですよ。うちの神社で、起きた事故ですし、放っておけませんからね。あなたには、まずはしっかりケガを治してもらいましょう。色々聞きたい事もあるかとは思いますが、治ったらお話させて頂きますから。ところで、あなたのお名前を教えて頂けませんか?まだ聞いていなかったもので。」

狛犬は相変わらずの笑顔で聞いてきた。

「あぁ、名前言ってませんでしたね。すいません。お…僕は、神谷 総社(かみやそうじ)です。28歳です。あの、狛犬さんは、名前はありますか?」

「ふふっ。無理して僕と言わなくていいですよ。普段、俺と言っているでしょう?いつも通りで

大丈夫ですよ。私の名前ですが神様にはコマと呼ばれていますので、どうぞコマと呼んでください。」


「えっ?神様?いや、はぁ、えっとコマ…さん。俺に拒否権はないんですよね?えっと、それじゃ今日からお世話になります。よろしくお願いします。」

「納得して頂けてよかったです。こちらこそよろしくお願いします。疲れたのではないですか?さぁ、もう遅いですしゆっくり休んで下さい。痛み止めと飲み物は置いておきますので、痛みがあるようなら我慢せずに飲んで下さいね。あぁ会社には、連絡済みですのでご心配なさらずに。それではお休みなさい。」

俺は、全て手配されている事に驚きながらお礼を伝えた。

「色々ありがとうございます。お休みなさい。」

そう伝えるとコマさんは、部屋から出て行った。

コマさんが出ていった後、肩の力が抜け一気に強い眠気に襲われ俺は深い眠りに落ちていった。


窓から差し込む日差しで目が覚めた。時計をみると朝の7時だ。会社に行かなくてはと身体を起こそうとして、ハッと気付いた。

(あぁ、俺、昨日階段から転げてケガしたんだった。会社暫くは行かなくて良いのか。)

心底ホッとした。あの会社に行こうとするだけで、最近は頭痛や吐き気に悩まされていたから。そんな事を考えていると、ドアをノックする音が聞こえて、ドアが開いた。

「おはようございます。総社さん。具合は如何ですか?痛み止めは効いていますか?朝御飯お持ちしましたけど食べられそうですか?」

と、コマさんが朝御飯を持って部屋に入ってきた。

「コマさんおはようございます。お陰様で、痛み止めが、効いています。朝御飯の支度までありがとうございます。」

俺は、コマさんに手伝ってもらいながら身体を起こした。幸い利き手は無事だった為介助なく自分で食べられた。食べ終わった後コマさんから今後の詳しい俺のスケジュールについて話があった。

まずは、身体をしっかり治す事。身体を治している最中は出来る事が限られてる為、今の仕事をどうするかを考える事。自分がどうしたいかをしっかり考える事。その上でやってほしい事があるとの事だった。もちろん給料は出ると言われた。しかし、コマさんの事は話してもらえなかった。

(俺は、どうしたいんだ?今の仕事は、正直続けていけるか自信がない。でも、コマさんの仕事を出来るかわからない。俺は、俺の出来る事はなんだろう?)布団の中で考えている内にいつの間にか寝ていた。






















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