『さまよえる古墳』』 下


 『まさか、この建物全部が、古墳?』


 彼女は答えた。


 『そのとおりです。』


 『あの。……みんな、あなた見たいに。出歩いてますか?』


 『いいえ。全部が、そうではないです。しかし、多少は出歩かないと、却っておかしいでしょう。だから、この団地全体の中でも、出歩けるひとは、必ず各棟に、最低ひとりはいます。』


 『ひえぇ〰️〰️〰️〰️😱 この巨大団地全体が、もしかして、古墳???』


 『ほ〰️〰️、ほほほほほ。そう。』


 ぼくは、ちょっとだけ、いや、かなり、ぞっとした。


 『あなたには、空いている一部屋をさしあげます。家賃は、要りません。我々の組織は、莫大な資産を持ちますから。あなたが亡くなったら、古墳をいっこ持つことになりますよ。』


 『あの、お断りしたいですが。』


 『まあ、もったいない。普通のひとが、もしもここに来たら、古墳本体は、隠されますよ。これは、さ迷える古墳なのです。どこにでも、空間移動できます。古代を甘くみちゃだめです。なぞの200年のなかで、この『くに』は、支配者が大きく変わったのです。我々はあなた方の祖先に、この『くに』を文字通り、譲ったのですから。我々は、隙間に移動しました。まあ、いいわ。一方的に、差し上げます。あなた、奥様から、おなじお墓に入るの、拒否されてるでしょう。これ、あなたの部屋の鍵です。要らなきゃ、死ぬときまでに、埋めなさい。せっかく、永遠の命を差し上げようと、申し上げているのですよ。この世界の長であるあたくしが。あなたは、いままで、いつも、世の中のはしっこだった。ちっとも、良い待遇には会わなかった。それはね、あなたが、この世よりも、我々に近いからなのよ。だから、たまには、中央に上がるチャンスを生かしなさいな。ナンバー、ツー、にしてあげましょうほどに。ほほほほほほほほほほ。』



 ぼくは、玄関を走り抜け、急いで、団地から外に出た。



 その後、そこがどうなってるのかは、知らないことにしているが、鍵は、まだ、埋めてはいない。



  ・・・・・・・・・・・・・・



           お わ り




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『さまよえる古墳』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る