リライト 第5話
これは、「第5話 開戦」を書き直したものです。直す前の第5話もありますので、ぜひそちらも読んでみてください。
元の第5話になかった新しい要素も入っていますが、大幅な話の変更はありません。
※第4話のリライトは一旦行いません。あとあと、するかもですが、今のところはしません。
元の第5話から、文章力が少しでも成長してるなと思っていただけたら、嬉しいです。
それでは。
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今日は私の誕生日〜。今日は私の誕生日~!
いつになく上機嫌な私。今日は2歳の誕生日なのです。
みんなに祝われるために、布団から出て、廊下を歩いてみる。しかし期待した反応と違い、通りかかる人、全員が私のことを無視するように、そそくさと過ぎ去っていく。誰も構ってくれないのが、ちょっぴり悲しくて、涙ぐみながら、とぼとぼと寝室へと戻る。
寝室に入ると、母がいた。それだけで、なんだか嬉しくて、お母さん。と呼ぶが、
「舞衣、ごめん。今、手が離せないの」
母も冷たい。なんだよ、みんなー。私のこと嫌いになっちゃったの? もう、トイレにでも立て籠もってやるもん。そう思ったのも、お手洗いに行く道中にでも、誰かに気づいて欲しかったからなのだが……。誰も彼も、何かに囚われるように、早歩きで横切る。新手のドッキリかな? とも考えたけど、2歳児に対してやるはずもないと思いながら、トイレの扉を引いてみる。あれっ。誰か入ってるのか。
それで引き返そうとした時にようやく私に声をかける者が現れた。顔を見上げると、そこには見慣れた顔がある。景泰だ。ただ、自分の名前を呼んでくれるだけで目頭が熱くなって、頬を通過した涙が顎で交わって滴り落ちる。私は、喉を絞り出すみたいに、景泰。と呼んで、その丈夫そうな足に抱きついた。
「大丈夫ですか。舞衣様。調子でも悪いのですか?」
「ごめん。ちょっとね」
景泰に事のいきさつを語ると、鼻で笑われた。
「あー、ちょっと今、鼻で笑ったでしょ」
「だって舞衣様が、あまりにもお子様ですから」
「これでも、まだ2歳ですー。あれっ、腕怪我してるの? 包帯巻いちゃってさ」
「こないだの明正さんのお仕置きから逃げる途中で、転んじゃって――」
私は、その怪我の部分をツンツンと刺激して、景泰は大げさに痛がる。やっぱ、私にとって景泰は年の離れた兄弟みたい。
「そうだ、そうだ。こんなことを話してる場合じゃなかった」
ボソッとつぶやいた景泰は、そのままトイレの扉を強く叩いて、
「明正さん。緊急会議ですよ。お腹下してないで、早く出てきてください」
扉の向こうから、何か聞こえるものの、ほとんどは悶え苦しむ声しか聞こえない。
「困ったなー。とりあえず、舞衣様。集会室に一緒に行きましょう」
集会室に着くと、すでにゾロゾロと集結していた。ただ、今回は部屋に入ってくる人の多くが忙しなく、空気がピリピリしている。イライラしている人も何人か見受けられる。数分もすると、その中の見覚えのない顔の一人がついに喋りだした。
「聞いている者も多いと思うが、遼源の王が危篤状態にある」
遼源って、私達の同盟国じゃん。でも、それってそんなにヤバいことなの? 私が一人首を傾げていると、誰かが駆け込んでくる音が聞こえる。
「元気モリモリ、父の帰還だぞー。あ、やべ。みんないるんだった。
みんな何事もなかったようにスルーしてる。景泰に関しては、どこを見つめているの?
「それで、みんな聞いたか? 灼炎の国が波流の国に攻めに来てるって」
そんな大事なことは、元気モリモリの前に言うでしょ、普通。父に普通を求めるのが間違いなのか?
それで、灼炎ってたしか、7大国の一つじゃなかった? それに、加藤重秀とかいう「剣神」の称号を持った武将がいたような。
「明正さん。お言葉ですが、そこは元気モリモリじゃなくて、元気百倍の方が良くないですか?」
今、そこに反応するの。それに、どこかの頭お裾分けするキャラクターみたいになっちゃうけど、大丈夫なのか?
「そうだな、次からは参考にするか。急に本題に入るが、あと30分もしないうちに赤旗の灼炎が攻めてくる」
赤旗って……あの村を襲った!? 集会室に不穏な空気が流れる中、私は、死ぬ前に訪れた村をめちゃくちゃにした兵士が持っていた赤い旗を思い浮かべていた。たとえ、土煙でその旗が汚れようと、斬殺した返り血によって赤く染め上げていく。鮮明に映し出された記憶の中の光景が、私の胸を、心臓をおかしくしてしまう。自然と呼吸の仕方も忘れたように、息苦しい。これは、過呼吸だろうか。つい、怒りの感情が高ぶっているものとばかり思っていたが、もしかしたら、恐怖によるものだったのかもしれない。
そんな私のことを、いつの間にか近くにいた母が安心させるように、抱き寄せて頭を撫でる。
「舞衣には、お母さんがついてるから」
そのたった一言で、まるで鎖みたいな硬い何かで締め付けられていた肺も、ようやく開放されたようで、息遣いも落ち着いた。
周りを見れば、父の顔つきは真剣だ。雰囲気からしても、ちょうど会議が始まるところだ。
「俺は今から敵を迎え撃つ。敵は灼炎。きっと厳しい戦いになるだろう。だから、今回は来たい者だけ来い」
「明正さん。さすがに今回はまずいと思います。お逃げになってください」
「そうですよ。農民よりもあなたの命の方が大事です。だから――」
「農民の命も俺の命もそれぞれ等しい。これは、誰にも覆せない事実だ。それに、彼らが食べ物を作って渡してくれるからこそ俺達は生きている。その恩を返す時が今なんじゃないか。別に俺だって死ぬつもりはない。農民の避難さえ終われば、後は逃げる。だから、俺の安否は心配しなくていい。最後にもう一度言う。俺は今から敵を迎え撃つ。来たい者だけ来い。以上だ」
言い返す人は、誰もいなかった。また、この部屋から出ていく人もいなかった。つまり、全員が戦うことを決めたのである。
――作戦会議。
「作戦会議っていっても、この国には軍師のように作戦を考える人は今はいませんよ」
「そうだよな。誰か案はないか?」
「あの、私に考えがあります」
「話してみろ」
「はい。まずは、敵を迎え撃つ組と、農民たちの避難を助ける組に分けます。そして、迎え撃つ組をさらに3つに分けます。そして、敵と戦う場所はできるだけ狭い道にします」
「なんで、狭い道にするんだ?」
「それは、敵の中でも先頭にいる人しか戦えない状況を作るためです」
「なるほど。つまり、道が狭いせいで、前に行きたくても行けないということか」
「そういうことです。この作戦は、農民を避難させるだけの時間を稼げれば、私達の勝ちです。農民の避難が終わったら合図をするので、上手く逃げてください」
「ちょっと、上手く逃げてください。は雑すぎないか?」
「明正さん、お言葉ですが、時間もないですし、何よりそれ以外思いつきません」
「まあ、よい。頑張るわ」
そして私と母は、和正さんという、父の叔父さんの家まで行くことになった。そうしないと、父は心配で戦いに身が入らないからだとか。その一行には、療養中で戦えない景泰も含め5人の父の家臣が付き添う。
全てが決まり、各々が集会室から飛び出していく中、父は懐から何かを取り出し、私の手をとる。
「舞衣。今日は誕生日だろ。プレゼントだ。桃の花のかんざし」
父は珍しく耳を赤くして照れている。こんな表情も見せるのか。と思いつつ、今日初めて祝ってくれたのが父なので、お父さん大好きって言おうと思ったけど、面倒なことになりかねないので、やめとこう。
その後、母にかんざしを付けてもらって、お披露目した。
「なんだ。この天使は! すごい似合ってる」
こんな戦いに行く前でも父は、いつも通りの父で、最後別れる直前に私と母のおでこにキスをして、
「いってきます」
父はその偉大な背中を向けて、行ってしまった。
_____
第5話のリライトは以上です。
もしよろしければ、良い点、悪い点、分かりづらい文など、コメントに書いてくださると嬉しいです。
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