リライト 第2、3話

これは、「第2話 Reincarnation」と「第3話 2年後」を書き直したものです。直す前の第2,3話もありますので、ぜひそちらも読んでみてください。

リライトの1話同様に、新しい要素も加わっていますが、大幅な話の変更(例えば、〇〇編という話まるごと無くなるといったこと)はありません。

主な変更点は、設定じみた所は消しました。

元の第2,3話から、文章力が少しでも成長してるなと思っていただけたら、嬉しいです。

それでは。

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 神経を通して私の脳に直接訴えかけてくる、この知らない声とにおいが私の目を覚ました。目を開けると、久しぶりの光は眩しくて、霧がかかったように視界がぼやける。次第に目の前の光景をはっきりと捉えられるようになると、まず目に入るのは、村の家よりもしっかりとした天井。それに、私を囲む見知らぬ人達だ。私は今、この室内で注目の的となっている。


 先刻まで、まどろみの中にいた私は考えていなかったが、これが夢じゃなければ私は生きている。


 ってことは、あの少女が助けてくれたのか。ありがとう。そう言いたくて、周りを見回したが、その少女はいない。それに、体を起こそうとしているのだが、無理そうだ。腹筋が麻痺したように使えない。


 それに、発声しようとすると、喉に違和感がある。どうせ喋っても日本語では伝わらないのだから。と簡単に諦め、あぁ、まだ重症なのね。そう納得した。



 たださっきから気になるのは、みんなの私への接し方だ。未だに言葉の理解はできないのだが、私へかける言葉の扱いが大人に対するそれではない。それだけは、分かる。それに、さっきから頬っぺたをぷにぷにと触られているのだが。


 え!? 何? こんなおじさんのどこが良いの? もしかして、変な人に絡まれてる?


 私が混乱しているうちに、より複雑で難解な事柄が起きた。周りにいる中でも、筋肉質なある男が私の体をいとも容易く持ち上げたのだ。


 おいおい。力持ちとかのレベルじゃないぞ。私の体重50Kgはあるよ。というかこの男でかくねぇか。私の体何個分あるん……。

 いや、こいつがでかいんじゃない。私の体が小さくなってるんだー!



 ということは……。どういうことだ? 



 考えている間に、男は私を抱えながら移動していた。移動した先は、畳が敷き詰められた広い部屋。その部屋には、100人くらいいるだろうか。たくさんの男がいて、ガヤガヤ騒がしい。この男達は全員、私のいる方向に向かって座っている。


 部屋に着くと同時に、私は別の人に渡され、その人に抱き抱えられていた。布を通して伝わる肌の感触から優しさを感じる。どんな人だろう。期待を胸に顔を見上げると、期待通り、いや期待以上だった。目に映るのは、裏表のない透き通った肌に、整った顔立ち。極めつけは花が咲いたような笑顔を私に向ける。自然と私は目をそらした。そらさないと自分の目が焼けてしまう程に、美しいのだ。


 私が恋にでも落ちかけた時に、部屋に緊張感が漂い、一斉に静まり返った。

 厳かな表情をした20代くらいの男が入ってきた。イケメンではあるが、なんというかオーラがすごい。怖さを感じる。その男は何か紙を持っていて、それを皆に見せる。


 元号が発表される時のように、みんなが注目している。

 そこには、「舞衣」という文字が書かれている。


 この会場の雰囲気から、言葉の分からない私でも分かる。


 絶対私の名前じゃん。え? というか何。漢字じゃん。まだ、存在するんだ。ん? 舞衣? ってことは……。


「えー!!!!!」


 顎が外れるほどに驚いた、私の声が部屋に轟き、みんながキョトンと固まっていた。


 やばい。ついつい声を出しちゃったよ。みんなが私の急な叫びに不審がるように、ジロジロと見ている。……。あっ、そうだ! 泣いてることにすればいいんだ。


 私が叫んでから、泣く演技をするまで謎の間はあったものの、みんなが心配しだしたので、ようやく胸を撫で下ろせた。




 それにしても、私、女になってるってことは、転生したのか。えっ、じゃあ、モテモテ大作戦はどうなるの? というか、今の自分の恋愛対象はどっちなんだー?

 その考えがまとまる前に、眠気が津波のように押し寄せてきた。私は、まぶたが自然と閉じていくのに抗うことなく、それを受け入れた。



 こうして、私の新生活1日目は幕を閉じたのである。




 次の日。目が覚め、周りを見渡すと、うっすらと暗い部屋の中に一辺、襖から光が漏れている。その光が、今は日中であることを気づかせ、また、揺り籠にいる私に部屋の様子を垣間見せる。私の知る和室とはまた少し違うが、和の雰囲気を作るには十分な襖や畳。ただ、気になるのは、この部屋広すぎない? たぶん、私一人のための部屋だと思うんだけど。きっと、昨日の名前発表の集会から察するに、よほど裕福な家庭に生まれたのだろう。


 すーっと息を吸うような襖の開く音がした。誰が来たのかを確認してみれば、昨日の私を抱き抱えた美女だ。彼女は可憐な笑顔を見せながら部屋に入ってきた。


 なっ! 彼女が誰かと手を繋いでる!? その相手が誰なのか、鬼気迫る表情で見る。その時間はとても長く感じるもので、私の拍動を除いた世界だけ時間の進みが遅い。


 ようやくその顔が判明したが、昨日、私の名前を発表していた怖そうなイケメンだ。しかし、その顔が崩れてしまうくらいに、すっごいデレデレしてる。 その二人は私のところへ向かってくるや否や、まずはイケメンが変顔を始めた。それを見て美女が微笑んでいる。これはいわゆる、赤ちゃんを笑わせにくるあれか? 続いてモノマネかな? 鶏のモノマネをしている。胸を突き出し、腕を腰に当て、鳴き声までセットでやっている。


 どんな心情でやっているのか分からないけど、私は心の底からこみ上げてくる笑いに耐えることができず、涙が出るほど笑った。


 初めて笑った私を見て、嬉しかったのか、二人は私を抱き寄せて、頬ずりしてきた。


 ちょっ、くすぐったいし、恥ずかしいし。でも、なんか心が温まっていくような……。あぶないあぶない。あともう少しで新境地を開拓するところだった。


 もしかしてだけど、この二人が私の両親なのか? 逆にそうじゃなかったら怖いわ。他人の子供に頬ずりって。



 そんな一風変わった家族と共に生活が始まった。


_____

第2,3話のリライトは以上です。読んでくださりありがとうございます。

もしよろしければ、良い点、悪い点、分かりづらい文など、コメントに書いてくださると嬉しいです。

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