第29話 3つの袋
敵は東唯の城から続々とやってきていた。
私は今すぐにでも敵を倒したかったが、景泰に襟を引っ張られて連れていかれた。
私は、ショックが大きかったせいもあって、その時の記憶があまりない。
***
ここから先は、私が元気になってから、みんなから聞いた話である。
_____
やがて、蒼天の城に着くと、皆はようやく息継ぎができたかのように、安堵の表情を浮かべていた。
その後、蒼天の者も含めて、破界の国への対策を話し合っていた。
話し合った内容は次の通りらしい。
①破界の国対策のためにも、新たに城を建てること
②スパイを送り込む + 情報収集をしよう
③私(舞衣)のカウンセリング
①の城建設は、そのままの通りだ。
②は、情報収集はいつも通り念入りにしようということになった。さらに、スパイを破界の国の4つの城全てに送って、内から情報収集しつつ、作戦の際に内から混乱を誘う役もやるということだ。
このスパイはかなり重大な役目なので、なかなか志願する人もいないか。と皆思っていたが、意外に20人も手を上げた。それぞれ5人ずつそれぞれの城に送り込むことが決まった。
③を、雰囲気が重苦しい会議の場で、出さなきゃいけないくらい、私は精神的に衰弱していたそうだ。これは、医療に普段従事している石井に一任された。石井の判断は全部的確に行われたおかげで、私は一週間で元気になることができた。
ちなみに、私は何を言われても、喋ってるのか、喋ってないのかよく分からない音量で、ぼそぼそと返答していたらしい。
想像するだけでみんなに、ごめん。と言いたくなる。
***
私が元気になってから、1週間が過ぎた頃には、九州でスパイをして敵の内部を探っている子達から、敵の情報が書かれた手紙が届いていた。
だいたい、いつもこういう手紙を見る時は、シゲを隣に置いて見るのだが、今日はいない。ちょうど近くにいる景泰に聞いてみた。
「シゲ見なかった?」
「高村なら、スパイの方と一緒に九州地方まで向かわれましたよ。」
「え? なんで?」
「舞衣様への説明はまだでしたか。話は、2週間前の会議にまで遡ります。」
景泰が話し始めた。だいたいまとめるとこういうことらしい。
①~③までを決めた後に、シゲが提案した。
四国と九州地方に残っている、破界の国じゃない6ヵ国(四国1つ、九州5つ)と連携して破界の国を叩く。神谷のことだから、すでにその6ヵ国へ侵攻を開始しているだろう。しかし、この前に蒼天が攻撃されるまでは、戦乱は一切起こっていなかった。つまり、まだ希望はある。
ってことで、スパイと共に、シゲを含め97人が九州へ向かった。四国へは、蒼天がスパイと一緒に向かったらしい。
「だから、いないのか。じゃあ、仕方ないから、景泰、一緒にスパイの子達から届いた手紙読もう。」
「なんか、うん。まあ、いいや。一緒に読みましょう。」
やけに封筒が薄いけどな。予想だと、中の手紙には、「元気ですよ。」とか書いてあることでしょう。
くじが当選しているのか確かめるように、胸を高鳴らせながら、手紙を開くと、なんと、な、な、なんと
「高村さんから、手紙が後でくると思うので、そっちに全部書いてあります。」
「はぁー? それなら、わざわざこの手紙出さなくていいじゃん! 誰かに見つかったら危ないのに、丁寧すぎ。」
「いつもボケばっかの舞衣様が、ツッコミしていらっしゃる。」
「あ、言われてみれば。」
そんなこと、どうでもええわ。とでもいうように、今度はシゲからの手紙が届いたようだ。これも、また封筒に入っている。
お、これが噂の全部書いてある方ね。
今度こそ、普通の手紙の厚さだ。もう、ツッコミしたくないからね。お願いだよ。そう思いながら、手紙を広げると、
「舞衣様。お元気でしょうか?
きっと今頃、元気にアホなことでもしてんだろ?」
「ちょっと、待って。これ、大丈夫? シゲの成り済ましじゃない? 詐欺とかじゃない?」
「まあ、考えられるとしたら、慶護でしょうね。」
「え!? 慶護も九州に行ってるの?」
なんとなく、難攻不落のシゲが、コンピューターウイルスの慶護によって、バグでも起きそうだな。
そのように私は、慶護がシゲの作戦に加わっていることに、謎の不安を覚えた。まあ、子供の危うさを、心配する母親って感じか?慶護は、子供っぽいからね。
シゲの筆跡が次に始まったところから、続きを読んだ。
「ごめんなさい。舞衣様。俺の監督が行き届いてないために。しかし、紙が全然なくて、書き直せないのです。ですから、このまま書き続けます。
本題に入ります。
まず、この数日間の調査で分かったことは、3点あります。
1つ目は、九州、四国の状況についてです。九州には
破界の国は、
つまり、その5ヵ国同士で潰し合いをさせることで、破界の国は自国に損害が一切ない状態で九州を制圧しようと目論んでいます。そのため、俺達はどうにかして、この潰し合いを止めます。
また、四国では、破界の国以外には、一ヶ国しかないので、一方的な殲滅を行っています。あまり、こちらにも余裕がないので、四国は一旦蒼天の国に任せます。
2つ目は、城の人数です。破界の国全体で20万人の兵士がいるようで、それぞれの城に5万人ずつ配置しています。また、神谷は基本的に北尊の城にいるらしいです。
3つ目は、破界の国の兵士でも、本当は神谷に従いたくない人が一定数いることです。ただ、これには大きな問題があります。それは、なぜか皆、神谷に従い続けることです。誰も神谷に背かない。まだ、なぜ皆が従い続けるのかは、分かりません。」
そこで、手紙は終わっていた。
だが、封筒の中にまだ何か入っている。
もう1つ手紙と、あとは、袋?
青 緑 黃 で色がついた、3つの袋が入っていた。
その中身とは。いったい。
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