第25話 王
協力してくれる者を集めている間、外国をある場所におびき寄せるためにも、情報収集をしていた。
そもそもなんで、グランギウス王国がこの日本に来たのか。私達の大きな疑問は情報収集によって解決した。
それは、日本人を力で圧倒して、そして日本の資源を大量に取り、日本人を奴隷として儲けることが目的のようだった。
目的によっては、倒し方も変える予定だったが、こんな私利私欲のために日本を使おうとしてるやつらに、情けはかけなくていいということが、私達の結論として出た。
そして、現在のグランギウスの居る場所が分かってきた。今、グランギウスは遼源と戦っているそうだ。遼源といえば、新潟とか富山あたりなので、ある意味好都合だった。
さっそく、私達は25万人という大人数で遼源まで向かった。ついに作戦が決行される時なのだ。そして、グランギウスを絶対に倒す。
遼源に着くと、もう遼源はグランギウスに負けたようで、大量の死体が転がっていた。そして、なんとか生きている人に聞くと、グランギウスは今、遼源の城に向かっているらしい。
きっと、グランギウスは勝った後だということもあって油断しているだろうから、急いで私達は遼源の城の方へ向かった。
3kmほど行ったところで、ついに見つけたので、グランギウスをある場所に向かわせるように、その方向だけ大きな隙間をあけるようにして、私だけがグランギウスと接触するようにして、25万人で囲んだ。
私は一番先頭で、シゲに言われた作戦を思い出して、真っ先にグランギウスと戦い始めた。
いくら、「天の羽衣」が鉄を切れる刀だからといっても、敵にそれだけの隙がないと切れないのである。でも、敵は日本人のことをなめきっているからか、それとも鉄の鎧が破られることがないからなのか、油断していたため、あっさり10人程倒した。もちろん、鉄の鎧を10人とも切っている。
それを見た外国人の司令塔のワージインは
「一旦ひけ!」
そういって、私達から逃げていった。
しかも、シゲが言った通り25万人の囲いの隙間のところから逃げ出した。
***
シゲが言うには、
「女がこの鉄の鎧をいとも簡単に切ってしまうのか!しかも、そいつの後ろには限りないほどの敵がいるじゃないか。あんな腕も細くて弱そうな女でこんなに強いんだから、きっと後ろにいる強靭な肉体を持つやつらはもっと強いんだろうな。」
***
と外国人は思って逃げるとのことだったが、本当に逃げた。
というか、本当に鉄の鎧を私は切れたのかと思って、めっちゃくちゃ嬉しかった。ようやく、私はみんなのために活躍できたのだと思った。
そして、まだこれは序章に過ぎなかった。私達はうまくグランギウスを誘導するように追っかけて行った。
そして、目的の山まで敵を追い込んだ。
外国人はいくら強靭な肉体を持っているとはいっても、さすがにあんなに重たそうな鉄の鎧をまとっているせいで、疲れきっていた。
しかも、鉄を切れるようなやつがたくさんいると思い込んでいるから、内心ヒヤヒヤしているところだろう。
その頃、私達は敵がこの山に入るのを見届けてからは、追うのをやめた。もう、最後の作戦をするだけで全ては片付くからだ。
グランギウスは標高300m程の山頂まで登り、私達が追ってきていないことを確認して、安心して話していた。
「それにしても、俺たちは少し日本人をバカにしすぎていたか?」
「たしかにな。今日の鉄を切ったやつもそうだけど、前に一人やられただろ。なんか、刃がついてない刀を使ってるやつに。」
「あれは、バケモンだったよな。やられたやつと一緒にいたやつも怖くて逃げ出して、なんとか俺たちと合流できたそうだし。」
「まあ、もう今日は疲れたから、寝よう。そして、明日はあのバケモン達に復讐しよう。」
こうして、外国人達はそのまま眠りについた。私達の作戦通りに動かされているとも知らずに。
外国人達が寝静まったのを見て、私達は前から用意していた30cm程の厚みを持った、耐火性能のある素材の高さ5m程の巨大な板を何枚も使って敵を囲んだ。
そして、その囲いの中に火のついた矢を打ち込んだ。すると、山なので、一気に火が広がり、外国人の叫ぶ声が聞こえ、囲いから必死に抜け出そうと剣で突っつく音も聞こえた。
そして日が昇る頃には、もう聞こえなくなった。
そして、ようやくグランギウスを倒した。
後に「誇曲(こがね)の戦い」と呼ばれるこの戦いを制したのは私達だ。
もちろん、この倒しかたはあまり気持ちのいい倒しかたではなかったかもしれない。でも、やらなければやられるこの世界で、平和を作るためには、私はどんな罪を背負ってでもみんなを守る覚悟を決めたから、地獄に落ちようがかまわない。
それに、仮に私が間違ったことをしていたら、それを正してくれる仲間もいる。だからもう何も怖くないって言ったら、幽霊は苦手なので嘘になるけど、きっとこれから先もどんな試練が待っていても私は、いや、私達は大丈夫だ。
めっちゃ、ラストっぽいセリフを言ったけど、まだまだ続きがあるんだよね。
私達はついに無敵とも思われた外国を倒して、喜びあった。
でも、まだやらなきゃいけないことがあった。戦後処理だ。
沼田のせいで8ヵ国は王や重臣を亡くしている。
さらに、先ほどまでグランギウスにやられていた遼源もそうだ。
もし、このままにしていてはたぶん、まとまりのつかなくなった集団のいく先は破滅だ。きっと、自己中心的に動く者が大量に出て、世の中は混沌と化すだろう。え?じゃあ、どうすればいい?そう思うだろう。
実は、この戦後処理まで含めてシゲは全てを作戦立てていたのだ。
*****
「舞衣様。今から灼炎と8カ国同盟を結んでいた国々に向かいませんか?」
「何か案でもあるのか?」
「はい。それはとても簡単なことです。まずは、8ヵ国同盟の国々に協力してもらうようにします。といっても、そんな簡単に協力してくれるのか。と思われるかもしれませんが、そこは、安心してください。おそらく8ヵ国同盟の国々も外国という未曾有の存在には恐怖を感じていると思います。王や重臣などの重要人物が殺されている今となっては、なおさらどうしたらいいかと、お先真っ暗になっていることでしょう。
ですが、そこで他の国からの協力の要請があったら、有無を言わず、協力してくるでしょう。まずは、それが第一段階です。
次に、この作戦に絶対に必要なパーツです。まず、とくかく準備が大事です。先を急いでは倒せるものも倒せなくなってしまいます。だから、情報収集は念入りにしましょう。
あとは、この作戦にはある巨大な材料も必要なので、神朴山にいる鍛治職人さんにも手伝ってもらう必要があるので、それも協力してもらうように使節を派遣します。それと、舞衣様に重要な役割を任してもいいですか?」
「ああ、いいけど。どんな役割なんだ?」
「それはですね。この前、灼炎が隼翔まで来た時に景泰の刀を切ったじゃないですか。あれをやってほしいのです。」
「んー。まあ、いいけど、期待しないでよ。私もあの時初めてできたし、またできるか分からないからね。」
「ありがとうございます。これで、全部の準備が整います。あとは、実際に行う作戦です。まずは、外国を見つけたらすぐに囲みます。
この際に気をつけてほしいことがあって、まず、敵を山に誘い込むために、わざとその方向には大きく隙間を開けておいてください。
それと、舞衣様はその時に一人、前に出て、敵の鎧を刀で打ち砕いてください。その時、舞衣様以外のみんなは敵とは離れていてください。万が一、鉄を切れるのが舞衣様だけだと悟られたら、終わりですから。
そして、敵は、女がこの鉄の鎧をいとも簡単に切ってしまうのか!しかも、そいつの後ろには限りないほどの敵がいるじゃないか。あんな弱そうな女でこんなに強いんだから、きっと後ろにいる強靭な肉体を持つやつらはもっと強いんだろうな。と思います。」
「ちょっと、待って。今、さらっと私のこと侮辱したでしょ。(。・`з・)ノ」
「え、いや、あ、してないです。」
「図星じゃん。まあ、一応強いって言ってたか。じゃあ、いいよ。続けて。」
「えーと、それで、敵は逃げ出します。あと、上手く山の方まで誘導するように敵を囲って追いかけます。そして、敵は山に着いたら、きっと山頂まで登るでしょう。とにかく、物理的に距離をおいておきたいと、思うことでしょうから。
そして、敵が山頂まで行ったら、あとは少し油断するのを待って、事前にこれから作る厚くて耐火性能のある素材の巨大な板を何枚も使って敵を囲みます。その後、敵がいるところに火を放ちます。あとは待つだけです。」
「これで、作戦は全部か?」
「実はここからが本番です。」
「え?敵は倒したんじゃないのか?」
「えぇ、敵は倒しました。でも、疑問に思いませんでしたか?なんで、8ヵ国同盟の国々にわざわざ協力してもらうのか。なんで、こんな大がかりな作戦なのか。」
「(え、別に気づかなかったけど、ここは自分の威厳を保つためにも)あ、あぁ、気づいてたよ。」
「ああ、そうですか。気づいてなかったんですね。」
「なんで、そんなすぐに嘘がバレるんだ。」
「だって、舞衣様、分かりやすいんですもん。」
「...。」
「まあ、素直でいいってことじゃないですか?」
「あぁ、そうだな。(^o^)/」
「子供みたいでアホらしいってことだよ。てんてこ。」
「あー。またそうやって、からかって。君の方がよっぽど幼稚でバカだよ、慶護。えーと、こんな話してる場合じゃないや。なんだっけ?」
「こんな大がかりな作戦にした理由です。それは、戦いが終わった後に、この8ヵ国同盟の国をまとめ上げるのです。」
「そんなことができるのか?」
「おそらく、できると思います。だって、舞衣様ですから。」
「そんな、てきとうな答えを出されても、私には無理です。シゲ先生。」
「きっと、戦いが終わった後に分かりますよ。きっと、できますから。」
*****
あーそうだった。シゲはなんか私ならできるとかてきとうなこと言ってたっけ。そんなの無理だよ。しかも、8ヵ国同盟の国々をまとめるって、ことは簡単にいえば、「君達、今日から私の手下ね。」ってことを言うってことでしょ。こんなの、みんなが勝利の喜びに浸ってる中言えるわけないよ。
そんなことを考えていた時、8ヵ国のそれぞれの代表的な人が私の元にきた。
それを見て、危険だと思ったのか、景泰やジイが刀を抜こうとしていたが、その8人は刀もおいて、地べたに手をついて、土に顔が埋まってしまうくらい、深く頭を下げた。なので、景泰とジイを引き留めて、8人の話を聞いた。
「私達はあなたにひどいことをしました。あなたがどんな人物であるかも知らずに、あなたのことを処刑しようとしていました。私達を処罰する代わりに他の者にはどうか手を加えないでいただけませんか。お願いします。」
「いや、それはできない。」
「そうですよね。こんなの虫のいい話ですよね。でも、どうか...」
「んーと、そうじゃなくて、まずは顔を上げて。」
そう言って、私はデコピンを8人にした。
「はい、これでおしまいね。」
「え?こんなんでいいんですか?私達はあなたを殺そうとしたんですよ。」
「いいよ。約束通り、お前達の仲間に手は加えないし、もう帰ってもいいぞ。」
「なら、せめてあなたのお役に立てるようになにかさせてください。」
「なら、家族と仲間を大切にしてね。あと、お前達も自分を犠牲になんかしないで、幸せになれ。」
私も仲間達がいたおかげで、そのことに気づけたから。第二の私を作らないためにも、これが一番大事な私の教訓なのかもしれないと思って、それを言った。
「ありがとうございます。」
そう言って、頭を下げていた。
私はさっきの条件を言った後に新しく思い付いた条件をどんとん増やさないうちに、もうひとつの戦後処理として、遼源の城へ向かった。もちろん、危ないかもしれないから、たくさん仲間も連れて。
***
遼源の城へ着いたが、さすがに城の中には簡単には入れそうになかった。
いくら私達が仇である外国を倒したといっても、昨日たくさんの仲間がやられたばかりの遼源にとっては、私達に構っている余裕なんて、物理的にも精神的にもなかった。
きっと、私がその立場だったら、来た私達のことを倒してしまうだろう。それくらいの精神状況になると思う。
だが、今のうちにどうにかしておかないと、収拾のつかなくなった国を元通りにするのは、あとあと大変なので、今のうちに話をするために、遼源の者に事情を説明して、城の中に入れてもらった。
遼源の者についていくと、大きな宴会場のような場所に着いた。そこには、大きな机があって、椅子に遼源の王の清寧茂光や遼源の重臣達が座っていた。やはり、外国との戦いのせいで、怪我している人が見たところ多い。それに、空席も多い。
「この度はどんなご用で?」
私は話した。もしこのままの状態でいると危ないということを。私が話し終わった後にシゲが、
「俺達、隼翔の国は8ヵ国同盟を傘下に入れました。もちろん、灼炎の国もです。もし、あなた方も俺達の傘下に入るというなら大歓迎です。でも、もし入らないなら、場合によってはってこともあるかもしれません。慎重にお考えください。」
遼源の者達は集まって会議をしていた。
その時、あれ?別に私は8ヶ国同盟を傘下に入れてないけどと思って、シゲにささやいた。
「これって、ハッタリで仲間にしようとしてる?」
「ハッタリではありません。だって、舞衣様は8ヵ国同盟を仲間にしたじゃないですか。」
「え?私は自分を大事にしろとしか言ってないけど。」
「そうなんですか?舞衣様と8ヵ国同盟の方が話した後に私の元に来て、これから隼翔の傘下に加わります。よろしくお願いします。って言われましたよ。」
「え!そうなの?」
私は少し大きな声で言ってしまったので、遼源の人がこっちを一斉にジロッと見てきたので、
「すいません。こっちの話です。」
そう言って、シゲともう一度話した。
「え?じゃあ、今の私は隼翔と8ヵ国同盟の9ヵ国分を束ねる大王ってこと?」
「そうです。8ヵ国同盟の方も言ってましたけど、舞衣様があまりにいい人で、そんな人についていきたいから、仲間になるそうですよ。第一、処罰がデコピンなんて初めて聞きましたよ。」
「そうか?ちなみにさ、シゲは私なんかが王でいいと思うか?」
「もちろん王として足りない部分もあるかもしれませんが、私は舞衣様が王様で本当によかったと思っています。私の誇りですよ。」
ちょっと恥ずかしかったから、照れ隠しで、隣にいた慶護にデコピンをしといた。
「痛ってーな。急に何すんだよ。」
「ごめん。本当にすまないと思ってる。」
「おい。顔が笑ってるぞ。ごめんは嘘だろ。」
「じゃあ、お詫びにこれあげるよ。」
「なんだこれ?」
「杉崎特製の手のひらサイズの私の人形だ。いいだろ?欲しいだろ?」
「いらねーよ。なんか、呪われそうだし。」
「えー。いいじゃん。持っとけ。」
「まあ、もらわないと後でなんかしてきそうだから、もらっとくわ。」
「やったー。」
こんな話をしている間に遼源の方では話がまとまったようで、
「今、遼源では外国との戦いのせいで、兵士も半分以上が殺されて、あなたが言うように、国の存続が危ぶまれます。ですから、隼翔の国の傘下に入れてください。お願いします。」
「え?いいのか?やったー。」
その話の後で、いろいろと取り決めが行われ、あくまで私は天下統一したいわけじゃなくて、平和を作りたいだけだから、農民を大切にすることを第一として、8ヵ国同盟と遼源、合わせて9ヵ国と新たに同盟を結んだ。
その同盟を「平和同盟」と名付けることにした。そして、外国との戦いで、ボロボロになってしまった9ヵ国の復興に協力することも約束した。
こうして、ついに、私は中部地方と関東半分を治める大王となった。
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